2010 12,12 23:45 |
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正直、「七人の侍」や「生きる」、「用心棒」など所謂黒澤の名作と言われている作品は、別にぃって感じで、何で黒澤がすごいのか分からなかった。
けれど、この「羅生門」を観て、ははあって平伏したくなるほどの衝撃と感動を覚えた。やっぱり、黒澤ってすげえ。そう思わせてくれたのがこの作品である。 原作は、芥川龍之介の「藪の中」。それでは映画的なタイトルとしてはどうかということなのか、物語の語り部たちが羅生門に集うという形に脚色されている。 途中まで、原作とほぼ同じ展開だか、原作には無いもう一つの視点が脚本に書き加えられている。それが果たして真実なのか、本当のところは原作同様藪の中で映画として、きちんと答えは出していない。どのエピソードにも、これでもかと人間のエゴイズムと虚栄心が投影され、そのために嘘をつく登場人物たち・・・。超一級のサスペンスさながらの緊迫感張り詰める展開だ。 光と影と風を効果的にとらえた演出は、白黒映画なのに、眩いばかりの色彩を観客に連想させる。 カメラワーク、構図、モンタージュ、クローズアップ、音楽、脚本、演出、演技、その全てが完璧。これを完璧と言わず、何を完璧と言おう。 黒澤が生み出した、そして日本映画界が世界に誇れる奇跡の完成度を誇る世紀の一本。 これこそが映画。 どうしようもないエゴと虚栄の中、ラストの人間に対する希望が魂を揺さぶる感動を生む。 栗5つ。黒澤、そして日本映画の最高峰。 京橋・フィルムセンターにて。
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2010 12,11 21:15 |
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有名な冒頭の30分は、コッポラの「ゴッドファーザー」に影響を与えたと言われている。結婚披露宴の中で、登場人物の相関関係を見せる手法は、あざやかだ。
前半のサスペンスは、良く出来ているものの、後半は、かなりつっこみどころも多く、コミカルでもある。 圧巻は、森雅之。老け役でメイクしているが、知らないと本人だとは気付かないほど。悪の権現の権力者と家庭では優しい父親というのを見事に演じている。 主要登場人物の誰もが自分のことしか考えておらずエゴが剥きだし、人間の嫌な部分をこれでもかと見せ付けられる。主人公が一見正義かと思えば、やっていることはとんでもない。 車のライトをいかした夜のシーンは、緊迫感がある。 この映画の全ては、ラストにある。今も昔も悪徳が栄える世の中なのよ。それって変わってない。まあ、言いたいことの全ては、最後の電話にあるんだろうね。 栗4つ。京橋・フィルムセンターにて。
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2010 12,09 23:12 |
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さん市 「金明竹」 お上手。でも、松っちゃんが与太郎っぽくなく普通の少年だった。 時松 「犬の目」 どことなーく元気なさそうに見えたけど気のせいかなあ? でも高座は、楽しくとっても面白かった。いろんな噺ができる人だよなあ。 目を抜く仕草が面白い。 金也 「親子酒」 酒でしくじった海老蔵と自身の同じような経験から「親子酒」へ。(笑) ホンキートンク 漫才 クールな感じとハイテンションのギャップが可笑しい。 玉の輔 「生徒の作文」 まくらが長かったなあ。面白かったけど。本編がちょっと短めだった。 文左衛門 「道灌」 まくら無しで本編へ。この風貌で女形は卑怯、面白すぎる。 夢葉 奇術 いつ見ても髪型が変。おばちゃんの失敗したパーマみたい。 さん生 「締め込み」 冷蔵庫投げるまくら好きなんだなね。なんかいつも聴くなあ。(笑) 金八 「近日息子」 こういうすっとぼけたネタがお得意なのよね。 丈ニ 漫談 漫談だけだったけど、笑った。そして、軽い、軽いねえ。他にない個性って感じで貴重だと思う。 紫文 粋曲 今日のネタは、全部知ってたけど、前の席のおじさんが大笑いするのでつられた。 金時 「文七元結」 「文七元結」を聴かずに年を越しちゃうかなあと思ってたけど、今日聴けて良かったよー。 金時師匠の「文七元結」も何度も聴いているけど、やっぱりすごいのよねえ。 登場人物の人物設定が決め細かい。こんなにたくさんの登場人物をそれぞれの想いをちゃんと描いて表現するのがもうびっくり。ぐいぐいと惹き込まれたねえ。 |
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2010 12,05 23:14 |
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洋の東西を問わず、あらゆるアクション映画の最高峰。ハリウッドのどんなアクション映画もこの「隠し砦の三悪人」の足元にも及ばない。ジョージ・ルーカスが「スターウォーズ」を作るにあたり、この映画から影響を受けたのはあまりにも有名な話だ。
とにかく危機また危機、ハラハラドキドキの展開に息もつけない。特に山名の関所を抜けたあたりからは、これこそジェットコースター・ムービー、怒涛の如く押し寄せる見せ場の数々、二転三転するストーリーは驚きの連続だ。 前半のお城での氾濫、初期黒澤映画のヒーロー藤田進と黄金期のスター三船敏郎の対決、追っ手の銃弾が飛び交う逃避行、火祭りの踊りと映画的な迫力ある見せ場もたっぷり。その中で、妹を犠牲にした姫の哀しみ、欲深い太平と又七のエゴなど人間ドラマとしても奥深いものになっている。 かつて、こんなにもすごいアクション映画が日本にあったのだ。何度見てもぶったまげる面白さ。これぞ、黒澤映画の醍醐味。映画とは、脚本が命。その代表のような映画だ。 まったく持って爽快なアクション巨編。大傑作。栗5つ。 京橋・フィルムセンターにて。
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2010 12,04 23:55 |
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以前、博物館には行ったことがあったんだけど、ホールに行くのは初めて。
最寄駅は、京王線の東府中。私鉄は、特急とか準特急とか急行とか快速とかなんか種類がいっぱいあって、どれに乗れば目的の駅に止まるのか分からないから困るのよねえ。 府中芸術劇場の前は、航空自衛隊基地。自衛隊基地の前には、ソープランドがたくさんあったなあ。なんだろう、この町の特性は。(笑) それにしても府中って、自衛隊あり、競馬場ありで、もしかして市民税とかものすごく安いのかしら? 龍玉 「ぞろぞろ」 弥助時代から何度も観ている「ぞろぞろ」だけど、今日はまた格段に面白かったなあ。真打になり、どことなく余裕が出てきた感じ。堂々としていて良かったなあ。 三之助 「棒鱈」 三之助の「棒鱈」も、もう何度となく聴いているけど、何度観ても引き込まれるねえ。そして可笑しくてたまならい。同じ噺、同じ演者、なのにどうしてこんなにも夢中になれるんだろう? 馬生 「笠碁」 途中、相模屋と近江屋がどっちがどっちか分からなくなったけど、強情な大人の意地の張り合いが可笑しくもあり、可愛くもあり、やっぱり上手いなあ。 小三治 「うどん屋」 今日は、まくらも噺もとっても可愛かった。失礼ながら、本当に子供がはしゃいでいるような可愛さだったなあ。 ドーナツとか全然関係無い話をしていたのに、いつの間にか江戸時代へ・・・。 登場人物のキャラクターがどれも可笑しく、最初の客にいらいらし、期待感たっぷりのうどん屋の可愛さに微笑ましくなり、最後の客の細かい描写とあっけらかんとしたサゲにもう夢中。 何でもなーい話なのに、それぞれの人物の人生やら生活感などがにじみでてきて、ああこの奥深さが落語なんだなあって思った。 |
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2010 12,04 23:09 |
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黒澤明のデビュー作。戦時中の作品だが、戦意高揚映画ではなく、アクション映画としても人間ドラマとしても良く出来た娯楽作で、当時の人は、本当に楽しく観ただろうなあ。
僕自身、黒澤作品で最も多くの回数を観ているのがこの作品だ。確かに、この作品よりも映画的に完成度の高い黒澤作品はある。けれども、何度も観ても引き込まれる不思議なパワーがこの作品にはある。 今回上映されたのは、ロシアで発見された散逸部分の12分を加えた現存する最長版。それでもオリジナルには、7分足りない。 この映画の魅力は、とてもよく練られ完璧なまでに役者と一体となった登場人物たちだ。クレジットこそ大河内伝次郎が先に名前が出るが、主役は、完全に藤田進であり、藤田演ずる姿三四郎の朴訥で力強く、無鉄砲で強情だけど心優しい男性像には、憧れてしまう。 宿敵檜垣源之助を演じる月形龍之介の不気味な存在感もなかなかの迫力。寺の和尚役の高堂国典も本当にいい味出している。 美しい日本の町並みにも心奪われる。三四郎と小夜の出会いの印象的な場面は、横浜の浅間神社で撮影されたが、現在との変わりように驚くほどだ。 姿三四郎という男の成長物語としても見ごたえたっぷりだが、黒澤のデビュー作にして驚愕の演出には度肝が抜かれる。特に、子供たちの三四郎の歌とともに街中を流れていくカメラ、そしてそして圧巻は、ラストの決闘シーン。吹きすさぶ強風、なびく薄、生き物のように形を変え流れ行く雲の空の下、歌いながら敵を待つ姿三四郎の場面は、黒澤は自然までも演出したかのような、まるでタルコフスキーもぶったまげの美しいシーンだ。 音楽の使い方も素晴らしく、ものすごく効果的。とても戦時中の作品とは思えぬ完成度だ。 なにはさておき魅力的な藤田の姿三四郎。こんな男になりたいなあ。 ただ、女の人から観たらどうなんだろうなあ。小夜みたいな待つ身の女、現代の女性にはどのように映るんだろう。 栗5つ。 京橋・フィルムセンターにて。
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2010 12,01 22:00 |
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ちょっと二番煎じで、またストーリーも全体構成も散漫な印象が拭えない印象があるが、それでも見所がたくさんある。黒澤作品の中では、かなり埋もれてしまい、あまり陽の目を見ない方かもしれないけど、愛すべき小品になっている。
旅から帰ってきた三四郎だが、強さ故の辛さに苦悩する日々。そこに登場するのが、車屋の少年。過去の自分を投影させているが、この辺りが分かるようで、二番煎じのようで・・・。また、異種格闘もちょっとおちゃらけていて、まあ三四郎の賞金の扱い方などコミカルで面白いけど・・・。 見所は、荒れて道場で酒を飲む三四郎に、怒りもせず酒徳利で足技をしてみせる矢野正五郎の描写。師匠の器の大きさを示すすごい場面だ。 かつての宿敵檜垣源之助を人力車で送る三四郎、そこに現れる小夜、ここでの源之助の台詞が決まっている。 今回の敵は、檜垣源之助の弟たち。兄貴の敵を討とうとするのだが、月形龍之介が源之助と次男の二役を演じているところと、三男の源三郎のキャラ設定に能の動きを取り入れて不気味で独特の雰囲気を出しており、これが最後の最後まで狂気じみていて怖い。 ラストの決闘場面は、雪中で裸足と過酷だが、前作の圧倒的映像美と比べるとかなり見劣りする。 しかし、この作品は、その後、山小屋でのこれまた緊張感あふれる静かな戦いがあり、その場面が興味深い。 そして最後の三四郎の満面の笑みは、すべてを達観し、これまでの苦悩を吹き飛ばし、次なる人生に進みだした一人の男の未来を台詞のない表情だけで示した素敵なものである。この藤田を笑顔を観るだけでも、この映画を観る価値があるね。 栗3つ。 どうせ一作目は超えられない、じゃあ好き勝手気に実験しちゃおうって姿勢が随所にあって楽しい。 京橋・フィルムセンターにて。
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2010 11,28 20:54 |
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大好きな談幸師匠の独演会。なんと今回は、地元中央区。わーい、近ーい。
それにしても、社会教育会館と落語って、結びつかないなあ。でも、最近、ここで開かれる落語会増えているんだよねえ。 松幸 「雑徘」
最近、アドリブが入る余裕がでてきたんだねえ。楽しい高座だった。 吉幸 「目黒のさんま」 爆笑のまくらは、以前たまごの会で聴いたものだけど、やっぱり可笑しい。 「目黒のさんま」もこの秋の聞き納めかな。 談幸 「富久」 この噺は、好きなんだよねえ。人生の盛衰が凝縮されている良い噺だよなあ。とてもお手本にしたくない人間のタイプである主人公の幇間だけど、これって誰しもが持つ人間の弱さと身勝手さを反映しているよなあ。 富札が燃えてしまっているのに食い入るあたりの描写は、もう素晴らしく、久さんにいらいらしちゃうほど。 身勝手な主人公をとりまく周りの人の優しい気持ちがなんとも素敵だよねえ。 コント青年団 コント 社会派コント。こういうのは、生の舞台じゃないと難しいだろうな。テレビだとクレームが来そう。(笑) トロツキーとか久しぶりに聞いたよ。東洋館とかに出ているのかなあ? 談幸 「薮入り」 談幸師匠の「薮入り」は、もう何度も聴いているけど、これ五代目円楽師匠に稽古してもらったものなんだって。 子供を思う親父さんの風邪をひいた時の場面が秀逸で涙が出そうになるね。 あ、そうそう、今日は、会場が人形町ということもあり着物で出かけたよ。東京の中では、和服が似合う町のひとつだと思うけど、やっぱりそれでも随分近代的になってしまったよなあ。 帰りに自分の会社のビルが見え、ちょっと興ざめ。(笑) |
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2010 11,26 23:51 |
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2010 11,21 21:55 |
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東大寺大仏展に行ってきた。もちろん大仏様は、来てないよ。来てたら、びっくりだけどね。(笑) それでも大仏に関連する宝物がたくさん来ていた。あわせて正倉院の宝物もちょっぴり。 このところ東京国立博物館の展示方法は、とっても凝っていて、特にハイビジョンを活用した映像の展示などビジュアルに力を入れている。細かい文様やデザインのアップの表示に、ハイビジョンのスクリーンをうまく活用している。 今回の目玉は、国宝の八角燈籠を展示しているところか。もって来ちゃったのねえ、こんなすごいもの。持ってくりゃいいってもんじゃないと思うのよねえ。あるべきところにずっとある方がいいものもあるんだと思うのよ。これ、この展示期間中、奈良の東大寺に行った人はがっかりだろうねえ。 しかし、大仏殿の前で見た八角燈籠は、それほど大きい感じがしなかったんだけど、室内に展示されているとまあ大きいこと大きいこと・・・。何度も見ているのに、こんなに大きかったんだねえ。 そして、バーチャル・リアリティーを活用した展示。実物大の大仏と、細かい意匠が大スクリーンに拡大されて観ることができる。最近、こういうものにもお金をかけえ作っているよなあ。 凝っているけど、ペイしているのかちょっと心配になる。博物館の企画展示の終始決算ってどうなっているのかねえ。 もちろん、奈良まで行った方がいいに決まっているんだけど、趣向を凝らした展示方法は、なかなかだった。 特別展「東大寺大仏―天平の至宝―」 東京国立博物館・平成館 ~12月12日(日)まで |
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