2010 11,20 21:33 |
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この映画を作った全ての人を誇りに思う。そして、かつて日本映画界にこんなにもすごい映画があったんだと、その底力には感服してしまう。
まさに黒澤映画の集大成、魂を揺さぶるヒューマニズムの傑作中の傑作だ。 三船の存在感は、圧倒的。全てが素晴らしく、彼以外の配役は考えられないほど。物語は、新入りの医者役の加山雄三の視点で展開していくが、群像劇さながら、多くの登場人物の生き様が織り込まれている。どれも悲惨で、切なく、絶望的ながら、その中にささやかな幸せと生きる希望が垣間見える。 そして、それぞれが強烈な印象を残す俳優陣の演技と演技とぶつかりあいに驚愕する。 過酷の環境の中、それでも生きている人間がいる。「どん底」がとことん希望がないなか、この「赤ひげ」では、人間の優しさと強さの連鎖が他の人々への支えになっている。 途中、何度も鳥肌が立ち、涙腺が切れそうになる。 最初反発している若者が成長していく様が描かれるが、その真っ当な物語展開はあまりに直球だが、心の底からの感動を与えてくれる。 映画を観て、魂が揺さぶられる、そんな数少ない体験をさせてくれる映画史上に残る傑作だ。 栗5つ。なにもかもが完璧。栗10個くらいあげたい。 京橋・フィルムセンターにて。
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2010 11,16 23:29 |
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二つ目の会だった火曜会。メンバーが徐々に真打になっていき、今日は、二人とも真打の会に。
今日も超満員。知っている顔もたくさんいて、とってもいい雰囲気だった。 龍玉 「ぞろぞろ」 若いのに、この人のジジイとババアは、味があって好き。 三之助 「お見立て」 正直まだしっくりこないなあ。三之助の実力から言って、まだまだ。 三之助 「浮世床」 これは二つ目時代から何度も観ている。三之助の「浮世床」は、面白い。すっとぼけた男がなんともいい。観劇の場面も茶屋の場面も何度見ても面白い。 まくらのベトナムの話は、面白かった。ベトナムでわざとiPhone無くした話は聞けなかったけど・・・。 龍玉 「駒長」 前にも思ったけど、これはとってもこの人で味が出る噺だ。それほど湿っぽくならず、あっけらかーんとした展開がとってもいい。それでいて、男と女の言葉ではいい表せない感情が良く出たいい噺だ。 |
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2010 11,14 21:31 |
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こちらは、ゴーリキの戯曲『どん底』を黒澤明と小国英雄が脚色した傑作。
タイトル通り、まさに人生の底辺、どん底にある江戸の崖下の長屋が舞台。およそ人が住むところと思えぬほどみすぼらしく汚い長屋からカメラはほとんど出ない。もともとが戯曲だから当たり前だが、映画というよりは演劇的色彩が強く、実際40日間のリハーサルを経て撮影されている。 夢も希望もなく、救いようもない絶望的な毎日の中で、それでもなんとか生き抜く市井の人々の描写がものすごい。まるで本当に登場人物そのものになりきっていて、切なくもあり、悲しくもある。されど、悲惨な生活の中でも、博打や歌や踊りに明け暮れる時の人々の表情の明るさに、生きるとは何だろうと考えさせられる。 ここでも山田五十鈴の悪女ぶりは圧巻で、ぶったまげる。 最後にはきっと何か救いがあるのではという観客の想いは、裏切られ、絶望的な最後が待っている。 ラストのどんちゃん騒ぎの後の最高の台詞が印象深い。 絶望的でどん底の人生、それでも生きている人間。生きるとは何ぞやと答の出ぬ問いかけに、映画的表現で応じたものすごい傑作。栗5つ。 京橋・フィルムセンターにて。
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2010 11,14 21:29 |
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「生誕百年 映画監督 黒澤明」が京橋のフィルムセンターで始まった。黒澤の作品は、全部スクリーンで観ている。名画座やリバイバルがほとんだだけど、全作ビデオでなく映画館で観ている。
そして、こういう特集上映の時は、やっぱりかかさず観にいってしまう。映画は、テレビの画面ではやっぱり物足りない。 この作品は、シェイクスピアの『マクベス』を戦国時代に置き換えたもの。脚本には、 小国英雄、橋本忍、菊島隆三、黒澤明と日本映画の神様的存在の名前が連なる。 三船敏郎の存在感は言わずもがなだが、圧巻は、山田五十鈴だ。彼女の動きには、能の技法が取り入れられ、暗闇から現れる不気味な演出は、背筋がぞっとするほど強烈な印象を残す。 森を疾走する馬に乗った武士、不気味なもののけ、効果的に使われた靄や霧と映像表現にもハッとさせられる。 もののけの予言に振り回されながらも、忠義や信頼をかなぐり捨て、自分の欲望と野望のままに滅び行く人間の悲しい生き様が凄まじい。天下を取ろうとする武将の影で、不気味に男を操る女の恐ろしさも強烈だ。 そして語り草にもなっている有名なラストの弓矢のシーンの迫力たるや、キューブリックの「シャイニング」も真っ青になる。 栗5つ。久しぶりに観てもやっぱりすごい。
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2010 11,10 23:21 |
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このところ仕事が忙しかったのと休日に予定が合わなくて、今回のお披露目には全く行けず。披露目の千秋楽にやっと伺えたよ。
小春日和のいい陽気だったので、着物を着て出かけた。 一力 「子ほめ」 開演は13時だけど、前座は12時45分に上がるので、会場は入ってくる人でざわざわ。やりにくいやねえ。でもめげずに明るく元気でお上手。 才紫 「黄金の大黒」 笛吹き童子の才紫さんは、お披露目では引っ張りだこ。 なんかいつも着物がピンクな印象。間抜けな長屋の連中のやりとりが可笑しい。 馬石 「元犬」 前半はしょってたけど、後半じっくり。 紫文 粋曲 お馴染み。だけど笑っちゃう。 伯楽 「猫の皿」 なんかお久しぶりに拝見。飄々とした風情。 相変らず仲入りに本を売ってたよ。(笑) 金馬 「七五三」 この噺は、初めてあたった。ラッキー。 口上 馬石・伯楽・龍玉・雲助・金馬・小三治 口上は、やっぱりいいねえ。大先輩の熱い言葉に胸がきゅん。 あした順子 漫談 ひろしさんがいないステージも、もう随分長くなっちゃったけど大丈夫なのかしら? それでも楽しく力強い。 雲助 「粗忽の釘」 いつもより不思議と凛として見えた。そして、やっぱりこの師匠はすごい。 アサダ二世 奇術 こちらもお馴染み。 龍玉 「夢金」 力強く、観客を冬の江戸時代へ引き込む。 冷たい描写と飄々としたサゲが秀逸だった。 |
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2010 11,08 23:32 |
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久しぶりの研精会。日本橋公会堂だと会社から徒歩数分なので本当に助かるわあ。日本橋劇場という名前も付いているホールだけど、近隣でその名で呼ぶ者は、皆無。昔から日本橋公会堂という方が通りがいい。
今日は、全体的に皆、早口だったねえ。志ん吉さんへの時間確保のため? 辰じん 「たらちね」 いろんな人がここを巣立って行き、そして次なる希望の星が辰じんだ。これほど観るのが楽しみな前座は、章五以来だね。いや、本当にこれから楽しみ。辰じんが前座なら、研精会に遅刻しないでがんばろうって思うよ。 夢吉 「寄合酒」 久しぶりに夢吉さんを観たよ。なんか太ったねえ。 楽しい高座。鬼ごっごの場面が秀逸。 小駒 「辰巳の辻占」 着物が渋くて素敵だった。 こみち 「死神」 以前、らくごカフェで聴いた時よりも格段に不気味な老婆の死神が秀逸だった。ダークなテイストの中に笑いを散りばめ、全体的な構成も素晴らしい。 ちょっと言い間違いが多かったのだけが残念。でも、これ今後、ものすごくこみちさんの中で聴きものになるね。本当に老婆が現れたような表情の変化が素晴らしい。 一之輔 「化物使い」 NHK新人演芸大賞受賞した一之輔さんだけど、正直受賞するのは当たり前過ぎて、それで持って今さら遅すぎた感すらあり。 高座は、もはや圧倒的。圧巻だ。 淀みない台詞の応酬、会場を爆笑の渦へ導くその手腕は、まさに至芸。 目線やその動きで家屋や内部のその空間までもが伝わってくる。本当に化物たちが目の前にいるような錯覚すら覚えた。 されど、今後まだまだすごくなっていくんだろうな。 志ん吉 「鮑のし」 前半、さすがに緊張していたのか、ちょっと表情が硬かったけど、立派に高座を勤めたなあ。 前座から二つ目になっただけで、いきなり変わるなんてことはないことは分かっているんだけど、今日の志ん吉さんは、大きく見えたな。トリの出番というのは、不思議な緊張感とパワーを持っているんだろう。 |
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2010 11,04 01:05 |
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この間、新宿の伊勢丹で蜻蛉玉の展示即売をやっていた。
蜻蛉玉で羽織紐作ったら素敵だろうなあと思っていたら、あったよ。好きな蜻蛉玉を選んで羽織紐にできるみたいだったけど、それなりに時間がかかるので待ちきれず、すでに羽織紐になっているのを買っちゃった。 これがその蜻蛉玉。不思議なデザインでしょ?吸い込まれそう。 こういう硝子なキラキラ風なものと、つや消ししたものも素敵だったんだよねえ。 この蜻蛉玉、香川県の工房にのみやあ~とで作られたもの。結構、あちこちのデパートのイベントに出店しているみたい。また、素敵な羽織紐があったら買いたいな。 |
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2010 10,24 23:48 |
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3年ぶりに仙厓の展覧会へ。出光美術館の仙厓のコレクションは、大変充実していて見ごたえがある。
なんとも言えないユーモラスな表情の画と個性的な書は、何度も見ても飽きないし、ずっと見つめていたくなる。 以前、観た書画もたくさん展示されていたが、子供と月を観ている絵は、何度も観ても微笑ましくなり、またその類い稀なセンスに唸らされる。月を取ってくれとせがむ両手を挙げた子供の姿は、父親と一緒にいる嬉しさにまるで踊っているような躍動感がある。 今回は、布袋12題として、布袋様の絵ばかり集めたコーナーもあった。でっぷりしたお腹、なんとも平和なご尊顔は、仙厓らしいチョイスだなあと感服。 なんとなくだらんとして、ゆったりした和やかな人間の一面を捉えたところに、彼の優しさが伺える。 落語好きには、たまらない「堪忍」の作品も今回も展示されていた。 また、仙厓が愛用していた品々も今回も展示されていた。織部焼きの湯飲みとか持っているあたり、やはり粋な人だったんだろなあ。 3年前の展覧会の感想は、こちら。「仙厓・センガイ・SENGAI ―禅画にあそぶ―」 仙厓 -禅とユーモア- 出光美術館 ~11月3日まで |
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2010 10,22 23:13 |
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馬鹿だねえ。馬鹿すぎる。
スタローンが脚本書いているから、台詞のボキャブラリーが少ないよ。こりゃ、多くの日本人が字幕無しで映画を楽しめるんじゃないの? スタローンが脚本書いているから、台詞がぞっとするほどおぞましいよ。恥ずかしくて聴いている方が赤面しちゃうよ。なんなんだろ、ミッキー・ロークの涙の演技。台詞が阿呆すぎて、それを聴いてまた涙ぐむスタローンが輪をかけて間抜けで、涙のシーンも失笑してしまう。 そしてお決まりのこれでもかの、大爆発と人間殺し。 爆発ドカーン、人間の腕がボーン、爆発ドカーン、人間の頭がズボボーン。吹っ飛ぶよー。血が飛ぶよー。 建物が壊れるよー。 馬鹿、馬鹿、馬鹿のオンパレード。でも、ここまで馬鹿だと見なきゃ損かも。 栗一つ。ユナイテッドシネマ豊洲スクリーン8にて。 馬鹿すぎて、脱力。ここまで馬鹿に徹することができるスタローンって、ある意味すごいかも。 まあ、ジェイソン・ステイサムはかっこいいわ。 何が怖いって、続編があるっぽい終わり方が怖いわー。やめてー。 |
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2010 10,19 23:10 |
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火曜会を予約した時、店主の青木さんから、「名古屋からひとみちゃんという芸人さんが飛び入りするかもよ」と言われた。うーん、なんか聞いたことある名前だなあと思ったら、ぱんださんのmixi日記で読んだことあったんだ。「それで確か、女じゃないんだよねえ?」って青木さんに聞いたら、「というか、おっさんですよ」って返答が・・・。(笑)
朝太 「たらちね」 朝太さんと言えば、かわいい愛されキャラなイメージだけど、なんか今日は、渋い「落ち着き」があったなあ。隣のばあさんが、なんか良かった。ちょっとしか出てこないけどね。 こみち 「改作・明烏」 (三遊亭白鳥作) 白鳥師匠が、こみちさんのためにアレンジした、女たちの視点から見た「明烏」。 こみちさんの芸達者ぶりが縦横無尽に発揮された超エンターテイメント大作だったよ。それにしても、こみちさんは、本当に何をやらせても器用だ。「女流噺家」なんて言葉は、もはやこみちさんには無意味な表現。男の噺家でこみちさんに蹴散らされ無残に散っている輩は、すでにごまんといるね。芸もいいし、風情もあるし、何より観客を夢中にさせる魅力に溢れている。 お噺の方は、白鳥師匠らしいドタバタに溢れているが、意外や時次郎と浦里が結ばれる件は、真っ当でいい話だったりする。もっと意表ついてすっとんきょうな展開の方がいいと思うけどなあ。ちょっとしめっぽく中だるみな印象を受けた。 しかし、素晴らしきこみちワールド全快で、観客は、大いに楽しんだことだろう。 ひとみちゃん 艶歌シャンソニエ家元 正直、よく分からなかった。まあ、特に今後も分かりたいという欲求も生まれず・・・。 落語の精鋭の火曜会メンバーの中に入れるには、あまりにも芸風が違いすぎだ。 あ、天どんさんの時ならいいかも。 朝太 「らくだ」 この間の朝太の会は、アメリカに行っていて聴けなかった「らくだ」が聴けて良かった。 朝太落語の魅力は、人物表現の多彩さだ。たくさん登場人物が出てきても、一人一人とても個性的で愛すべきキャラで、表情豊かだ。間抜けな奴も怖い奴も威張っている奴もどことなく可愛さと憎めなさを持っている。市井の人間の何でもない日常だけど、それでもちょっぴりドラマチックなのがいい。 つらいことがあったばかりだけど、それを乗り越えてまた一段と成長して良い噺家になると思うよ、この人は。何があっても高座の上では、観客を喜ばす。芸人って、やっぱりすごいなあと感じた。 |
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