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2014 06,08 19:28 |
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それでも現代的なのは、主人公がパソコンを習って新たなスキルを身につけようと努力はするところ。また舞台の戯曲だった『欲望という名の電車』(のちにヴィヴィアン・リーで映画化)に比べると、細かい登場人物が多く、それらが皆自分勝手なところにアレンの現代社会への冷めた目線がある。 一見狂人のような主人公のジャスミンだが、彼女の自尊と虚栄は、大げさのように見えて、人間の普遍的な本性をこれでもかと見せつけられているようで痛々しい。ケイト・ブランシェットは、上流階級時代の役と落ちぶれてもまだ往時の自分を捨てきれない女を演じていて圧巻だ。ただ、どうしても映画『欲望という名の電車』と比較してしまうと、鬼気迫る精神の破壊が強烈だったヴィヴィアン・リーのすごさが思い起こされてしまう。 結末も『欲望という名の電車』とほぼ同じだけど、絶望的でかなり後味の悪い旧作よりは、まだ潔い清涼感がある。 自尊、虚栄、嫉妬、これでもかとぶつかり合う中で、真実の愛を模索し、妥協しながら生きている市井の人々が時に切なく、時に楽しく、人生の光と影が凝縮した佳作である。 栗4つ。品川プリンスシネマ スクリーン4にて。 しかし、こういう映画を見せられると、現代においても階級によって、恋愛対象、住む場所、食べる物、買えるものもこんなにも違うのかと改めて認識させられるなあ。 |
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2014 05,11 11:13 |
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前シリーズのサム・ライミ版が面白かったので、今シリーズもやはり観てしまう。ホラー映画が得意なサム版より、新しい方がダークで重いね。 スパイダーマンが好きなのは、この映画の悪役。もともとは善人なのに、スパイダーマンへの愛があるのに、誤解によってそれが憎しみに変わる点。シェイクスピアの悲劇みたいなところが好き。愛が憎しみに変わる恐ろしさ、人間が描かれているよねえ。(笑) ただ、毎回思うのは、並行して描かれるエピソードが多過ぎて、全体的に散漫な印象がぬぐえない。ピーターの両親失踪の謎、電気マンのエピソード、ハリー・オズボーンの物語、ピーターとグウェンの恋とまあ、盛り込み過ぎ。 びっくりしたのは、タイムズ・スクエアでのアクションは、ロケではなくセットだということ。バックはCGなんだろうけど赤い階段とか、ああ、ここ行った行ったと観光気分に浸れる。 娯楽アクション大作なんだから、もっとシンプルでもいいなと思った。 栗3つ。TOHOシネマズ日本橋 スクリーン8にて。 オープンして間もないTOHOシネマズ日本橋。この地区には映画館が無かったが、TOHOの本拠地有楽町に至近なだけにお客さんの取り合いにならないのかな? プレミア・ボックスシートで鑑賞。革張りで左右のスペースが広く、隣と仕切りもあり落ち着いて鑑賞できる。新宿ピカデリーやユナイテッドシネマ豊洲のプレミアシートほどの豪華さはないが、値段も手頃でいい感じ。ただカップルで来ると会話しづらい。一人で映画鑑賞には最適。全席このシートになれば、無駄話する客が減って静かに映画鑑賞できるのにな。 |
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2014 05,05 23:37 |
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ネタバレ有り。
同時上映の短編「ミッキーのミニー救出大作戦」は、素晴らしい。モノクロのノスタルジーなアニメの世界から一転、スクリーンの外と中を縦横無尽に駆け巡り、はちゃめちゃで可笑しくて楽しい。3Dの機能を上手に活かし、映画の世界と外の世界の行き来がとってもいい。スクリーンを逆さにしたり、スクリーンから飛び出すとカラーになったりと、これは絶対に3Dで見るべき。ディズニーランドのアトラクションとしても十分成り立つクオリティー高い作品だ。 でも、なんかものたりない。そもそCGアニメは、ディズニーぽっくない。「白雪姫」や「眠れる森の美女」の柔らかで神秘的で、ちょっとどこかおどろおどろしくもあるあのテイストがない。デジタルな動きはカクカクしていて馴染めないなあ。 また脚本もいまいち。最初に子供時代のエピソードを見せられるので、何故エルサがアナを避けるのか、それが優しさ故であるというのを観客は始めから知っている。エルサが冷たい女で何か影がある方が物語的には面白いと思う。邪悪な部分が少ない。また、最後にアナがあのまま死んでしまって、氷の女王の心が溶けるという方が好きな展開だ。最近のアメリカ映画は、残酷な展開が無く、余韻が残らないなあ。まあ、ハッピーエンドの方が大ヒットするし、そもそも続編ありきなんだろうね。 唯一、雪だるまが夏を想って歌うシーンは、アメリカ映画らしいバカバカしさがあって好きだ。 栗3つ。全体的には優し過ぎて物足りない。 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン10 3D英語字幕版にて。 |
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2014 02,02 15:54 |
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ディカプリオは、いろんな映画で様々な役に挑戦していて、がんばっているなあ感はとってもあるんだけど、どの映画を見ても同じなんだよねえ。 前半はマシュー・マコノヒー、後半は気味が悪いほど憎たらしいジョナ・ヒルの方が存在感があり、同時にスクリーンに出るとディカプリオは霞むなあ。 前半の成り上がるまでの過程はテンポ良く見せるが、後半はダレるなあ。 エンド・クレジットのバックに流れるのが、なんとロビー・ロバートソンの曲。これが、素晴らしいの、かっこいいの。残念なことにサントラに入っていないのよ。映画のことは忘れちゃいそうだけど、この曲はYouTubeでヘビーローテション決定! 「グッドフェローズ」をもう一度に、ならなかったね。栗3つ。 ただ、マシュー・マコノヒーとジョナ・ヒルは見る価値あり。 新宿ピカデリー スクリーン1にて。 |
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2013 12,14 22:13 |
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<良かった点> <残念だった点> 迫力ある映画なので、観るならなるべくスクリーンが大きく音響施設の整った映画館での鑑賞をおすすめする。
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2013 08,13 18:10 |
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ペストが万延している中世ヨーロッパのその暗黒時代とこの主人公一団に纏わりつく死神がなんとも時代を象徴していて秀逸だ。 中世にタイムスリップして、その場で物語を体感しているのではと錯覚する。 こういう映画を観ると、映画ってモノクロの方がいいなあと思ってしまうなあ。光と影がもたらす効果が強烈に脳に焼き付く。 生と死、そして神の存在を考えさせられる。 栗4つ。ユーロスペースにて。
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2013 08,13 15:35 |
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公開当時は、衝撃的過ぎてカットされたレイプシーンも今となってはもっとえげつない映画がたくさんあるし、復讐の殺戮もおとなし目な感じすらする。 それよりも何よりも、レイプされ殺される少女になんの哀れみも感じない。過保護で育てられた我が侭で嫌な性格の女で、こんなの酷い目に遭えばいいのにと思ってしまう。敬虔なクリスチャンと思いきや感情のおもむくままに何の葛藤もなく復讐に走る両親にも共感できない。 唯一感情移入できるのが下女だ。ずる賢く正直なところがいい。 あえて考えてみると、死んだ少女や娘を溺愛している両親の身勝手な姿が、これが人間の愚かさだよと見せられていたのかもしれない。 それでも、神の存在を云々するにはお粗末な内容だと思うねえ。そもそも中世で、少女だけで森に行かせるその設定が納得がいかないなあ。 公開当時は、衝撃的な作品だったんだろうけど、時代を超えられなかったと思うよ。 後味悪いし・・・。あ、ピレ・アウグストが好きそうだな、こういう映画。 傑作とは、とても思えない。 栗3つ。ユーロスペースにて。
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2013 08,13 13:38 |
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主人公の老医師が大学の名誉博士授与式のため、ストックホルムから大学のある街まで車で移動する。今で言うところのロードムービーなのだが、道中出会う人々と自身が見る夢の中で出会う過去・現在の人々との会話が可笑しくもあり、切なくもあり、時に辛辣で胸に突き刺さる。喜劇と悲劇は紙一重、些細な出来事と決断が人生を変えて行く。 冒頭すぐの最初の夢の場面でもう鳥肌が立つ。初めて安部公房の「壁」を読んだ時のような衝撃だ。死を予感するイメージと圧倒的な映像表現は強烈だ。 その後の老医師と家政婦との短い会話の中で、この主人公の固陋さ、身勝手さ、プライドの高さ、そして孤独を数分の場面で人物像を焼き付ける手腕は流石だ。 夢と現実が織物のように紡がれるストーリーの中で、人生、宗教、家族とは何だろうと考えさせられる。自分を見つめ直すというか、自分を初めて発見する旅のようだ。車中、主人公が一緒に旅する息子の嫁に「昨夜見た奇妙な夢の話をしようか」と問いかけると、彼女は「あなたの夢に興味なんかないわ」と応える。こういう台詞の応酬も憎いよなあ。 いつか自分が死ぬ時に、何を振り返るのだろう? 栗5つ。ユーロスペースにて。
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2013 06,02 22:44 |
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しかし、謎が全て分かった時点で、あとはいつもの予定調和。ドキューン、バキューン、CG、CG、CG・・・。 それにしても、主人公の正体、エイリアンの正体、謎解きの設定、どれもこれも過去の映画で繰り返し使われてきたプロットばかり。もう新しいアイデアなんというものは生まれてこないのかねえ。 モーガン・フリーマンが、全く光ってないねえ。つまんない役を引き受けたもんだ。 まあ、この手の映画を観るなら映画館の大きなスクリーンでということか。主人公が住んでいる家のインテリアやデザインが素敵。あんなプールがあったら泳いでみたい。 栗2つ。それにしてもここまで過去の映画のパクリ集大成だとあきらめがつくね。そして、これも911以降ありがちな、妙に家族愛とか人間愛とかをお涙頂戴っぽく入れてくる最近のアメリカ映画は本当に苦手だ。娯楽に徹するとか、残酷な結末を突きつけ嫌な余韻を残すとか、そっちの方が好きだなあ。見終わった後、何も残らない。 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン10にて。 |
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2013 04,13 23:39 |
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映像がこれまたすごいけど、ちょっとテレンス・マリックみたいになってきたなあ。冒頭の海の場面、そして主人公の心の内を吐露するような不思議な音楽のシンフォニーは、これまたマリック風。 新興宗教の教祖という設定はさておき、自分とは全く違う人間に惹かれ合うというのは分かるなあ。それもその関係がリスキーなほど不思議な酔いが生まれる。惹かれ合う磁石は、いつかは反発していく、これはなんか使い古されたプロットだけど、それさえ吹き飛ばしてしまう俳優陣の演技がこれまた魅力的だ。 ちょっとマイナスなのは、マスターに惹かれるほどこの主人公はインテリの欠片もなく粗野過ぎて、ちょっと違和感があったなあ。あと、ホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンの演技の応酬は、噂通りすごいのだけど、前作「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のダニエル・デイ・ルイスとポール・ダノの方があまりに強烈過ぎたので、それと比べてしまうとそれほどの驚きは無かったね。 それにしても、アメリカって雑魚映画だけじゃなく、こうした見終わった後も脳味噌の片隅に鋭い杭を打ち居座り続ける映画を作るところがすごいよなあ。 栗4つ。映像美と音楽に酔いしれながら、人生を考える。 TOHOシネマズ シャンテ スクリーン2にて。 |
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