2006 11,30 21:12 |
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「雨月物語」と並ぶ溝口の傑作中の傑作。「雨月物語」や「山椒太夫」同様、湖の小舟のシーンが素晴らしい。
ささいな偶然がとんでもない事件となり想像を絶する結末へと向かっていく。身勝手な人間の中で、誰かのために生きようとする悲劇は、切ないまでに壮絶で悲惨だが、一方で狂おしいほどに美しい。 世間体や家柄ばかりを気にする卑しい人間と純粋な愛を追い求める二人、それ故に逃走する二人に迫る追っ手、映画はぐいぐいと観客を引きこんでゆく。 残酷で過酷な運命の終焉に至上の微笑みで死を持って愛を成就するものすごい物語だ。原作は近松門左衛門の「大経師昔暦」で、実際にあった姦通事件の劇化。近松の人間を見つめる鋭い視線に背筋がぞっとする。そこに映っているのが人間そのものすぎて・・・。 死の決意から生の決意へ変わる湖上の小舟の情景は、映画史に残る名シーンだ。 栗5つ。 近代フィルムセンターにて。
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