2007 01,07 21:28 |
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李香蘭主演の「支那の夜」を近代フィルムセンターで観てきた。溝口の特集以上の混雑に正直驚いてしまった。
映画は、戦時中に作られた国策映画で、中国人に日本化を推し進めるような台詞のシーンがある。軍の依頼のもとに作られた映画だからしょうがないが、正直歯の浮くような台詞にちょっと観ていて赤面。 山 口淑子が、昨年の日経の「私の履歴書」でも書いていたが、長谷川一夫にビンタされるシーンは、本当に頬を思い切り打たれたそうだ。他の船員たちの喧嘩の シーンでは、殴るふりだけで全くかすりもせず、自分から倒れたり、バケツの中に入ったりと見ていて滑稽だったが、長谷川のビンタのシーンだけは確かにもの すごくリアルだった。 脚本は、「生きる」や「七人の侍」の小国英雄だが、ストーリーはたわいもない。しかし、この映画には、見所聴き所が二つある。 一 つは、美しい戦前の蘇州を舞台に李香蘭が「蘇州夜曲」を歌うシーン。戦前、戦中、戦後、いや日本の歌謡史で最も美しいこの曲は、この映画の主題歌だ。西條 八十の詩は、メロディーがなくとも胸を打つ響きがあり、それに服部良一が付けた美しい旋律は、映像と一体となって光り輝く。桃の花が咲き乱れる蘇州の風景 は、まるで桃源郷だ。当時、このシーンを観た観客は、今、戦争していることが嘘のように思えただろう。 もう一つ、上海ホテルのテラスでこれまた李香蘭が歌う「支那の夜」だ。バックの上海の街はセットだが、ネオン煌めく上海の夜に響く歌声とメロディーは、美しい。これも詩は西條八十、曲は竹岡信幸。 この美しい二つのシーンの後、川での戦闘シーンがあり、やはり今は、戦時中だと思い知らされる。 悲恋で終われば映画として良かったと思うのだが、チープなハッピーエンドがいただけない。 大根役者が多い中、戦争中改名させられていた藤原鶏太(戦後、藤原鎌足に戻す)の演技が自然でいい。 そして何よりも李香蘭。この人がどんな思いでこの役を演じていたか、その胸中を察するとこちらの胸も痛くなる。李香蘭の表情は、美しくもいつも悲し気で切ない。こんなものすごい人生・・・、それに比べて自分の人生のなんと退屈なことよ。 名曲「蘇州夜曲」を口ずさみながら、映画館を出ていた。これは、歌を聴き観る映画だ。栗3つ。国立近代フィルムセンターにて。本日は、満員札止めだった。「支那の夜」は、あと1回、1月24日(水)15:00より上映される。 |
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