2007 02,08 20:18 |
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手紙というのは不思議なもので、会ったこともない遠い昔の人と心が繋がったような気がする。手紙から伺えるのは、その人の小さな片鱗に過ぎないのに、どうしてこんなにも胸を打つのだろう。
太 平洋戦争最大の激戦地であった硫黄島。栗林の手紙には、島への空襲や兵士の死傷が淡々と書かれているが、まるでそれがあまりに日常過ぎて、何でもないこと のようにさえ思える。硫黄と地熱の蒸し蒸しとした悪臭、全身を覆う蠅、蚊、油虫に閉口との描写があるが、彼の手紙には、本土に残してきた家族への愛に溢れ ている。家の台所のすき間風の対策をしてこなかったことの後悔、子供たちの将来、子供たちから手紙の誤字の直しなど、まるで戦地から手紙とは思えぬ内容 だ。 栗林のことは、何も知らない。でも、栗林という人間がこの日本の歴史の中にいて、その人物に出会えなかったのがとても残念に思える。ここまで魅力を感じるのは何故なのだろう。 また今、自分の周りにこれほどの魅力を感じる人物がいないのが残念だ。 栗林忠道 硫黄島からの手紙 栗林 忠道、半藤 一利 文藝春秋 1000円 ISBN:4163683704 |
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