2007 03,10 18:50 |
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戦争という悲惨な側面を抱えながらも、日本と日本人がまだ美しかった時代の物語。木下恵介は、戦時中にも戦意高揚映画であったはずの「陸軍」の中で反戦を 連想させる有名なラストシーンを作ってしまった人物だ。戦後、彼の平和への想いが最高の形で昇華したのがこの作品だろう。
構図、カメラワークの美しさは圧巻で、特に桜の下の電車ごっごのシーンは秀逸。海や山の美しい背景は、まさに自然のセット。もう一つのこの映画の主役と言っていい。 そ して何よりも、高峰秀子と子供たちの演技が素晴らしい。日本映画史上最高の演技力を持つ高峰秀子(本当に、この人は、出る映画出る映画、皆違う演技で驚嘆 する)は、「浮き雲」とは全く違う、でも戦中・戦後を生きた女の喜びと悲しみを完璧に演じている。子供たちも表情も、本当に自然で、前半は映画でなくまる でドキュメンタリーを観ているかのようだ。 全編を流れる唱歌の旋律は、美しい自然と調和して心の琴線に触れる。 上映の最中、あちこちですすり泣きがおきていた。あの時代を生きた人たちの悲しみは、この映画で描かれている以上のものだと思う。 役者、演出、映像、音楽、全てが完璧な日本映画の珠玉の一編。こんなにも美しく、こんなにも悲しくて、こんなにも幸せな映画は、そうはない。 銀座・東劇にて、デジタルリマスターを鑑賞。 栗5つ。
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