2007 12,25 17:03 |
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一気に原文で読んでみた。日本語の持つ美しいリズムと格調高い文体は、やはり震えがくるほど素晴らしい。
単なる滅びの美学でなく、頂点を 極めた者の悲哀が全編を駆け巡る。鎌倉時代に成ったものであり、そもそも平家=悪で描かれているのだが、平家打倒の立役者である木曽義仲が都で横柄な態度 を取れば、東国の田舎侍と今度は排除され、壇ノ浦での平家滅亡の功労者である義経は、頂点の座に固執する兄・頼朝に討たれる。ある者が頂点を取るまで、人 々の優しく期待に溢れた態度をとり、頂点を取ったその瞬間から嫉妬と欺瞞とで次の標的となる。人間への洞察が恐ろしいほどだ。 もう一つ、古来日本人にある死生観が興味深い。武士たる者、敵の手に堕ちるよりはと自害する。そうかと思えば、果敢に敵群衆の中に突っ込み死ぬ、囚われたなった者は死ぬ前に一度妻に会いたいと願う。いずれも極楽浄土を願う仏教の思想が根底に流れる。 短く簡潔ながら印象的な描写に惹きこまれる。喜界島で一人取り残される坊主、切り殺されていく武士たち、8歳の安徳天皇を抱えまさに海へ入水しようとする清盛の妻・時子など、まるでその場にいるような気さえする。 武士の盛者必衰だけでなく、あまりに波乱万丈な人生をおくる清盛の娘・建礼門院徳子が、出家した後、生きながら六道を体験したと語る「潅頂巻」も秀逸だ。 名文に酔いしれ、史実を元にしているとは言え完璧なストーリー構成に圧倒される。 |
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