明治、大正、昭和、平成を生きた版画家、平塚運一の展覧会を観に千葉市美術館へ。102歳で亡くなるまで創作活動を続けたすごい人だ。 若い頃の色鮮やかなグラデーションの風景画は、その美しさにうっとり。描かれているのがここ日本だということが信じられない。昔の日本の田舎、都市の景色のなんと美しいことか。版画なのでかなりデフォルメされているとは思うけど、逆に版画でここまで美しい風景を記録できることにうならされる。戦前の朝鮮半島、中国の景色も本当に美しい。とにかく構図が素晴らしく、本当に風景を切り取るのが上手だ。 珍しく貴重な記録だと思ったのは、関東大震災直後の街の景色だ。瓦礫やバラックの向こうに旧国技館、浅草の姿など見たことのない景色が広がっていた。 一転、晩年は黒一色の世界。紙の白と黒墨との白黒の世界となる。寺や仏像が圧倒的力強さで彫られ、ものすごい迫力で迫ってくる。 驚きなのは、70歳で娘の嫁ぎ先のアメリカへ渡り、そこで30年間創作活動をすること。70歳を超えて衰えることない創作意欲、衰えるどころがアメリカの風景を斬新なスタイルで彫っていく。最晩年の裸婦像は、鏡を使ったこれまた斬新な構図に驚かされた。 版画なのに、風が吹き、湖面や川面が揺らぎ、夜空の月の輝きと雲の流れを感じた。久しぶりにすごいものを見せられたなあ。 常設展示もとっても良かった。大好きな川瀬巴水もあり、嬉しかった。 あまりに素晴らしかったので、久しぶりに図録を買った。 木版画の神様 平塚運一展 千葉市美術館にて 9月9日(日)まで
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