2016 11,13 22:19 |
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「今日、世界は死んだ。もしかしたら昨日かもしれない。」様々な職種の人が書いた肉筆原稿が貼られたトタン板で仕切られた小部屋に、奇妙なコレクションが並ぶ不思議な展覧会だ。東京都写真美術館で杉本博司だから、写真展だと思ったら、なかなか凝ったアプローチがとても面白かった。それぞれの肉筆原稿は、杉本が書いたものだが、多くの著名人が代筆していた。例えば、建築家は磯崎新、解脱者は千宗屋、人ゲノム解析者は平野啓一郎、国土交通省都市計画担当者は森美術館館長の南条史生だ。
ロシアの宇宙飛行士が宇宙で使った小便器や大便器、ジャップ・ハンティング・ライセンスと書かれた証明カード(硫黄島)、石器時代の斧、月の隕石など奇妙なコレクションは、展示方法も面白く見応えがあった。しかし、せっかくの素晴らしい企画なのに、この美術館の展示室では狭すぎる。 一つ下の階の展示室では、廃墟になった映画館の写真。朽ち果てた館内にスクリーンだけ眩しく輝いている。写真手前の床に撮影時そこで上映した映画の名前が書いてある。実際にその映画を上映しているスクリーンの明かりで長時間露光を行い撮影するというすごいもの。僕が初めて杉本を知ったのは、この映画館シリーズなのだけど、それは廃墟ではなく、人は誰もいないけれど現役の映画館だった。杉本の写真は、海といい、自然史博物館のジオラマや蝋人形といい、昔から「ロスト・ヒューマン」だったのだねえ。 廃墟の映画館の裏側には、2005年の杉本博司展でも展示されていた京都・三十三間堂の仏像群。手前に大きな柱があったのが残念だが、荘厳なる雰囲気だ。もし、この空間に自分一人だったら、どんなに贅沢だったろうねえ。 これまでにない試みがとっても面白かったけど、もっと写真を観たかったな。 |
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