2016 04,17 22:15 |
|
「湖畔」であまりにも有名な黒田清輝の一大回顧展。東京国立博物館のすぐ近くに黒田清輝記念館があり、また国立博物館の常設展示にも時折さりげなく展示されていたりするので、それ以外の作品も僕には馴染み深い。それでも今回は、その集大成的な展覧会で多くの作品が一堂に会すとても見応えがあるものだった。
フランス留学中、と言っても絵のためではなく、本来法律を学ぶためだったが、そこで出会った女性をモデルをした「読書」など、西洋の技法や印象派に影響を受けた明るい色使いの作品群は、当時としては斬新だったんだろうなあ。黒田が好きだったというミレーの「羊飼いの少女」がさりげなくオルセー美術館から来ていた。本来ならこの一枚をメインに展覧会をやってもいいくらいだよね。(笑) 帰国後、展示会に出品した「婦人裸体像」は、卑猥だと警察から腰の部分を布で覆われるという仕打ちをうける。いろいろと悩み苦労しながら、日本の画壇のために尽くしたいという彼の気持ちも伝わってくる。 残念ながら戦災で焼失してしまった「昔語り」は、下図とデッサンが残っていて、それだけでも心が鷲掴みにされる大好きな作品だ。僧侶が語る悲恋話を聞く市井の人々を描いたものだが、その表情や仕草からそこに描かれていないそれぞれの物語が伝わってくるようだ。 こちらも戦災で焼失してしまった東京駅の壁画の写真をプロジェクターで投影する形で展示していた。これまでの東博の特別展に比べるともうちょっとお金をかけて東京駅の雰囲気も再現するなどしてくれればもっと良かったのになあと思った。 絶筆「梅林」は、花が咲いている風景なのに、どんよりと暗く重い色彩の中に、まだ絵に対する志半ばの思いも伝わってくるようだった。 「湖畔」だけじゃない巨匠の全貌を知る素晴らしい展覧会だ。 特別展「生誕150年 黒田清輝─日本近代絵画の巨匠」 5月15日(日)まで。 東京国立博物館・平成館 |
|
コメント |
コメント投稿 |
|