2014 06,08 19:28 |
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ウディ・アレンの新作。かつての女性富豪が無一文に転落して、妹の家に転がりこんで暴力的な妹の夫(この映画では恋人)といざこざになりながら、新たな恋にも挑むというテネシー・ウィリアムの戯曲『欲望という名の電車』にそっくりというかかなりばくりな内容だ。
それでも現代的なのは、主人公がパソコンを習って新たなスキルを身につけようと努力はするところ。また舞台の戯曲だった『欲望という名の電車』(のちにヴィヴィアン・リーで映画化)に比べると、細かい登場人物が多く、それらが皆自分勝手なところにアレンの現代社会への冷めた目線がある。 一見狂人のような主人公のジャスミンだが、彼女の自尊と虚栄は、大げさのように見えて、人間の普遍的な本性をこれでもかと見せつけられているようで痛々しい。ケイト・ブランシェットは、上流階級時代の役と落ちぶれてもまだ往時の自分を捨てきれない女を演じていて圧巻だ。ただ、どうしても映画『欲望という名の電車』と比較してしまうと、鬼気迫る精神の破壊が強烈だったヴィヴィアン・リーのすごさが思い起こされてしまう。 結末も『欲望という名の電車』とほぼ同じだけど、絶望的でかなり後味の悪い旧作よりは、まだ潔い清涼感がある。 自尊、虚栄、嫉妬、これでもかとぶつかり合う中で、真実の愛を模索し、妥協しながら生きている市井の人々が時に切なく、時に楽しく、人生の光と影が凝縮した佳作である。 栗4つ。品川プリンスシネマ スクリーン4にて。 しかし、こういう映画を見せられると、現代においても階級によって、恋愛対象、住む場所、食べる物、買えるものもこんなにも違うのかと改めて認識させられるなあ。 |
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