2005 01,14 23:15 |
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そこだけ時が止まったような、そんな空間だった。小津、黒澤、溝口、成瀬、木下・・・、日本映画の名作は、ほとんどここで観た。 今でも、たまにもしかしたら、並木座が再開されていて、太ったあのお姉ちゃんや、気のいいあのおばちゃんが出迎えてくれるのでは、なんて期待を持って、ビルの前まで来ることがある。 当たり前だけど、もう並木座はない。もし、僕にお金がたくさんあって、銀座に土地が買えたら、並木座を再建したい。自分の好きな映画だけを上映する、そんな映画館。でも、宝くじが当たっても、銀座の土地は買えないな。 一番の思い出は、木下恵介の「陸軍」を観た時かな。ラストの田中絹代が戦地に行く息子を見送るシーンで、隣に座っていたおばあさんが号泣し、つられてあちこちで泣き出して、僕も声を出して泣いてしまった。映画館であんなに号泣したのは、これっきり。涙が止まらなかった。 「陸軍」は、昭和19年に戦意高揚映画として製作されたが、途中戦争を美化する場面があるにも関わらず木下がこめたメッセージは、逆説の反戦だった。台詞もなく、田中絹代の表情だけで、全てを語らせたラストシーンは、戦後60年の今こそ観たいものだ。 |
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