2012 09,09 23:51 |
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大好きな監督ビリー・ワイルダーの傑作。
往年の大女優が過去の栄光に囚われて狂気の沙汰を現実で演じる側面ばかりが評されているが、4人の主要登場人物の歪んだ愛がものすごい。 仕事が上手くいかず借金が返せない若い脚本家の男は、たまたま迷い込んだかつての大女優の邸宅で、女主人の愛が重くのしかかるも、その手から逃れられない。まるで安部公房の小説のような不思議な展開。 それでも、「誰もが冷たいハリウッドで、彼女だけは優しかった」と断ち切れない想いに揺れ動く。 かつての大女優は、昔の栄光に今も酔いしれている。現実は見えず、金という力で男を囲う。哀れみはいつしか真実の愛に変わって行く。しかし、それはものすごく狂気じみていて恐ろしい。 若い脚本家の女は、野心に燃え、男の脚本家を利用してのし上がろうとする。婚約者がいるにもかかわらず、それは愛へと変わって行く。 女優の狂気の演技がものすごいので忘れがちだが、一番倒錯していて狂気じみているのは、この家の執事だ。最後の方で関係が明かされるが、一番歪んだ愛の形を見せつけられる。 四人四様のエゴがむき出しになるが、大女優の話ばかり語り継がれるのは、グエン・スワンソンの度肝抜く名演技に尽きる。 自分だけが可愛い人間のおぞましさの中に他人への歪んだ愛が垣間見えるものすごい作品。 栗5つ。 午前10時の映画祭 TOHOシネマズみゆきざにて。
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