2010 12,24 22:43 |
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この映画も何度も観ている。なのに飽きない。
『晩春』が日本人の心の美しさを表しているとすれば、『東京物語』は日本人の切なさを象徴している。 家族というものを親と子、それぞれの視点から描いているが、この頃の日本で既に親から見た家族の喪失を描いていることに驚く。昔は、家族の絆って強かったとのだろうと勝手に思っていたけど、意外と今と変わらなかったのかもしれない。 杉村春子演じる一見嫌味な長女だが、この人物こそ市井の人々の代表なんだろう。目の前の事象に上手に対処し、喜怒哀楽も普通にあるが、一方で物事に対して冷めていてエゴむき出し、自分さえ良ければそれでいいタイプだ。 対照的に原節子演じる死んだ次男の嫁は、他人なのに一番優しい。あまりに親切で優しいその姿だが、時折見せる冷たい表情に偽善的な匂いも感じないではない。ラスト「私、ずるいんです」とういう台詞を原に言わせる脚本は、ものすごい。それに対する笠智衆の台詞は、涙無しには観られない。 どうしようもない孤独と喪失感、切なく悲しい展開に、でもこれが人生なのだろうと妙にしみじみしてしまう。 たんたんとした日常の中に人間というものを描ききった稀有な作品。 栗5つ。 神保町シアターにて。
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