2010 11,14 21:31 |
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こちらは、ゴーリキの戯曲『どん底』を黒澤明と小国英雄が脚色した傑作。
タイトル通り、まさに人生の底辺、どん底にある江戸の崖下の長屋が舞台。およそ人が住むところと思えぬほどみすぼらしく汚い長屋からカメラはほとんど出ない。もともとが戯曲だから当たり前だが、映画というよりは演劇的色彩が強く、実際40日間のリハーサルを経て撮影されている。 夢も希望もなく、救いようもない絶望的な毎日の中で、それでもなんとか生き抜く市井の人々の描写がものすごい。まるで本当に登場人物そのものになりきっていて、切なくもあり、悲しくもある。されど、悲惨な生活の中でも、博打や歌や踊りに明け暮れる時の人々の表情の明るさに、生きるとは何だろうと考えさせられる。 ここでも山田五十鈴の悪女ぶりは圧巻で、ぶったまげる。 最後にはきっと何か救いがあるのではという観客の想いは、裏切られ、絶望的な最後が待っている。 ラストのどんちゃん騒ぎの後の最高の台詞が印象深い。 絶望的でどん底の人生、それでも生きている人間。生きるとは何ぞやと答の出ぬ問いかけに、映画的表現で応じたものすごい傑作。栗5つ。 京橋・フィルムセンターにて。
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