2010 10,16 12:57 |
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ナショナル ジオグラフィック誌に掲載された傑作ノンフィクションを10篇集めたもの。
どれも極限状態に置かれた人間の生き様、そして死が痛ましい。 タイトルになっているのは、アフガニスタン内戦の英雄マスードの渾名。タリバンの砲弾が舞うアフガニスタンで若き解放のリーダーに密着したルポは、まるで一遍の映画のようだった。マスードが暗殺されなければ、アフガニスタンの現状は、今と変わっていたかもしれない。そして、マスード暗殺の数日後に、9.11のテロがアメリカで起きる。 10篇のうち個人的に興味深かったのは、次の二編だ。 まずは、ナチス統治時代のウクライナで洞窟の暗闇の中に2年間隠れ続けたある家族の物語。ナチス関連のエピソードは、映画になったりして結構たくさん観ているが、これは知らなかった。 人が容易に入って行けない洞窟の奥の奥へ隠れ家を作り、空気穴や逃げ道を用意し、かつその過酷な環境の中でも生きるために料理をして煙を出さねばならない。 男たちは、夜な夜な洞窟の外へ出て、廃品回収などで闇市で食材を手に入れねばならない。洞窟に隠れているとはいえ、毎晩危険な街へ行かねばならないのだ。じゃあ、女性は、安全かというとなんと2年間も陽の光り浴びれないという、これも過酷なものだった。 もちろん彼らだけの力では生きて行けず、生活物資を応援してくれる人の協力があったのだが、一方でやはり密告する人もいて、洞窟の家族は何度も危機に遭う。見つかって連行されてしまった人もいた。 奇跡的に生き延びた家族のインタビューから構成されたこの実話に驚きながらも、人間の生への執着の凄まじさを感じた。 もう一つは、実際に山で遭難した人のエピソードから、人間の行動を科学的に分析したルポだ。遭難した時のパニックから人間が引き起こす奇怪な行動、「なんでそんなことするの?」と思うようなことを、極限状況に置かれた人間はしてしまうのだ。生き残るためにどう行動すべきかも述べられているが、一旦こうだと信じきった人間、こうだと信じたい気持ちが引き起こす悲劇のスパイラルに背筋がぞっとした。 |
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