2010 09,28 17:40 |
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毎度、楽しみにしている加藤さんの個展。
事前にいただいていた案内で今回の変化の片鱗を知ってはいたのだけど、実際ギャラリーに入った時に、思わず「ええっ」と声を上げてしまった。 彼がずっと描き続けてきたモチーフ「丘の上の家」が「灯台」と「船」に変化していたのだ。 色調も黒をベースにしたダークなものが多かった。 「灯台」と「船」という結びつきやすいモチーフだが、それぞれが同じキャンバスの上には載っていない。「船」の絵と「灯台」の絵が別々だけれど、同じ空間に陳列した時に、イメージの世界は無限の広がりを作り出す。 入って正面に飾られている漆黒の闇に浮かぶ「船」は、その中にスポットライトが浴びているように、しかしそれは煌びやかではなく、柔らかな光で、木彫りの船の質感が驚くほどリアルだった。 興味深かったのは、「灯台」の絵だ。灯台は、丘の上に立っており、海や水が描かれていない。丘の上の灯台は、光で何かを導く必要がないのに光を出している。これはこれで不思議な世界観があり、また彼の絵のこれまでのモチーフであった「丘の上の家」のように、切り取られた心象風景だ。 されど、同じ空間に並べられた「船」の絵が、その空間に水を想像させる。狙ったものなのかどうか分からないが、これは面白いと思った。 「船」の絵に「灯台」。光に導かれるように、この「船」は、故郷の港に帰って来たのか、はたまた見知らぬ地への旅の途中なのか、いずれにせよこのギャラリーに留まらないどこか別の場所へ、いつの間にか見ている者も旅立っているのだ。 10月2日(土)まで 『加藤 雄太 展 ―時は寄る辺のない海にも似て―』 11:00~19:00(最終日は17:00まで)
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