2008 10,04 23:26 |
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鴨長明は、賀茂御祖神社の神事を統率する家に生まれたが、望んだ地位や出世が叶わず、今で言えば負け組みと言われそうだ。そうした境遇から見る世間は、負け犬の視点かもしれない。
しかし、有名な序段の文章は、美しすぎる。「平家物語」と同じくらい、この「方丈記」には、美しい日本語のリズムと表現に溢れている。 地震、飢饉、遷都により荒れる都の表現は、一級のルポルタージュのようで、苦しむ人間の姿、腐り朽ち果ててゆく数万の民衆、路上で横たわる腐乱死体の無残な日常が強烈に脳裏に焼き付き目の前に見えてくるようだ。 そんな時代だったからかもしれないが、余計に彼の”人の世の無常”がひしひしと伝わる。見えてくるのは、そんな時代でも自分が可愛く、立身出世のために自己矛盾を正当化する人間の営みだ。 とにもかくにも至上の美しさを誇る名文に酔いしれた。 |
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