2006 01,09 23:08 |
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日本映画が世界に誇れる最高峰の一つ。
前半、美しかった日本の家族のあり方に微笑ましい想いで見つめるが、段々、荒涼とした寂寞感が滲み出てくる。 尾 道から東京へとやってきた老夫婦は、自分の子供たちに最初は、歓迎されるが徐々に邪険にされてきて、孤立感と疎外感を感じ始める。その中で、原節子演ずる 次男の未亡人だけが、本当の子供以上の優しさを見せる。戦後間もない頃、既に日本の家族が崩壊している様をまざまざと見せつけられ、心が痛くなる。 されど、共感してしまうのは、杉村春子らが演ずる実の子供の方だ。原節子の優しさに、お前たちは、こんな風にできないだろうと、脅迫状を突きつけられているかのよう。その原節子に、ラストで「私、ずるいんです」と名台詞を吐かせる脚本に戦慄すら覚える。 この映画には、先日の「疾走」のように、殺人、レイプ、放火、ヤクザなどは全くでてこない。大きな事件も起きず、淡々と市井の人々の日常を追うだけだ。何気ない日常がこんなにもドラマチックで、可笑しくて、悲しくて、切なくなるのは、どうしてだろう。 ある家族の人生の歴史は、そのまま観客のものと重なっていく。この映画を観ることは、人生における貴重な体験であり、そして観てしまったら、いつまでも胸に突き刺さり続ける。 家族とは、人生とは、何だろうと考えさせられ、そして、心の棘が抜け落ち、見終わった後、誰かに優しくしたくなる、そんな映画だ。 5つ栗。満点。 銀座シネパトスにて。
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