2006 04,22 22:07 |
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新藤兼人の脚本・監督による1960年の作品。瀬戸内の痩せた土地の孤島に暮らす一家の物語を全編台詞を一切省いて綴った新藤の実験的ながら最も成功した映画の一つ。音楽と動物の鳴き声と、時折雑踏の声がある以外は、台詞が無い。
島には、水がなく、近隣の島へ樽を担いで水を汲みに行くシーンが何度も何度も延々と登場する。それが彼らの人生の、生きるためのほとんどのように思えるほどだ。 台詞は、無いが、乙羽信子、殿山泰司、他子役の表情は、台詞以上に雄弁で、楽しさと可笑しさと悲しさと切なさが胸にひしひしと伝わる。 モノクロの映像の美しさは、秀逸で、まるでベルイマンかドライヤーかと思わせる。 何よりも、日本人が失ってしまった人間性と生きることの美しさと厳しさが、圧倒的な自然美の中に描かれている。 家族愛の楽しい日々が、後半の悲しい出来事と対照的になり、悲しさが倍増する。すすり泣く観客も多かったのが頷ける。 ラストの展開は、容易に予想ができるが、それさえ払拭してしまう、「人間が生きる」という意味への問いかけは、心に鋭く突き刺さる。 生きている間、いつまでも心のどこかに引っ掛かり続けるであろう。 京橋・フィルムセンターにて。
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