2006 05,22 23:47 |
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昨年の夏に発売された『僕の見た「大日本帝国」』の姉妹版かな? 前作を読んだ時、もう少し写真が見たいなあと思っていたら、文字通り「写真で読む」版が今年になって発売された。しかし、ただの写真集ではなく、新たに書き下ろされており、読み応えもたっぷりだ。
僕も、一応、旅好き(西牟田さんの前では、恥ずかしくて言えないが・・・)なので、いろんな所を旅したいと思っている。でも、この本に書かれた彼の旅路は、恐らく行けない?行かないだろうなあ。ある意味、羨ましくもあり、嫉妬さえ覚えてしまう、そんな旅だ。 西牟田さんの旅は、かつて日本だったことがある場所の旅だ。サハリンに残る鳥居から太平洋の島々まで、大日本共栄圏を行く。興味深いのは、かつては同じ日本統治下だったのに、国によって今の日本に対する思いがまるで違うところだ。親日的な場所、反日的な場所、表面は優しいが内面を見せてくれない場所、様々だ。 全てが反日的かと思うと、墜落する飛行機から脱出せずに村を守ったとして、飛行士が祀られている台湾の村があれば、731部隊など日本の悪行をこれでもかと見せつけ展示する博物館もある。壊された神社建築の跡、あえて残すことで過去を忘れない象徴とされた建物、中途半端に壊してさらされている建築など、本当に様々で、そのそれぞれにその国の人の感情が垣間見れる。 731部隊の博物館を訪れたり、竹島を巡る韓国人群集のフェリー・ツアーに単身乗り込んだりと、到底僕にはできないつらい旅へ、西牟田さんは出かけて行く。 もともと文字を持たなかった奥地の民族は、日本語に好意的な人もいて、今も日本語で看板や表札を出していたりする一方、中国や韓国など既に独自の文化を謳歌していた民族には、日本化されることへの抵抗があったのは、至極当然だろう。 東京がつまらん近代建築になっていくなか、中国や台湾には、威風堂々とした日本の大建築が残っている。一方、跡形も無くなった神社、そうした写真もこの本には、満載だ。 朝鮮半島には、朝鮮戦争があり、中国も文化大革命があった。それでも、それより前の日本との戦争の傷跡が今も双方の心に残っている。理解して未来に進む、そのためのヒントが、この本にある。 写真で読む 僕の見た「大日本帝国」 文・写真 西牟田靖 情報センター出版局 ISBN:4-7958-3123-8 |
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