2006 06,26 21:07 |
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昨年、かさんからいただいた本。ブックカバーをしたまま本棚に並べていたので、読むのを忘れていた。
読み始めたらはまってしまい、夢中になって読んだ。硫黄島での日本軍とアメリカ軍との地獄の攻防は、映画や他の本で漠然とは知っていた。しかし、硫黄島での最高責任者、栗林忠道については、良く知らなかった。栗林が、日本よりアメリカでこんなにも有名だということも。 こ の本で思い知らされるのは、硫黄島での悲惨な出来事の記録より、手紙の持つ力だ。栗林が家族に宛てた手紙がたくさん残っていて、それを読んでいると、会っ たこともない、まして生きた時代も違う栗林に接しているかのようだった。栗林の細やかな配慮ある文章のせいでもあるのだが、言葉の持つ魔力のようなものに 心を奪われた。 太平洋戦争の最激戦地、硫黄島から家族に宛てた栗林の手紙は、妻の水仕事でのあかぎれの心配や庭の手入れのことが書かれて いる。水も食料もなく、灼熱と硫黄で咽返る洞窟の中で、明日をも知れぬ運命の男の手紙とは到底思えない。戦時下で、軍人として生き、その職務を全うしなが らも人間であり続けたこの栗林という男、タイムマシンがあってもし会えるなら、会って話しを聞きたい。そんな思いにかられた。 僕は、日本 が平和な時代に生きているけど、あの戦争の時代を生きた人々と比べて、どちらが人間的だろうかとふと思ってしまう。何年生きたかより、どう生きたか。そち らの方が重要だと思う。あの時代の生き方、運命とかそいうのではなくて、時代時代の生き方というのを痛切に思い知らされた。しかし、そうするとニートとい うのも時代の生き方なんだろうか? この硫黄島の戦い、今年映画化される。クリント・イーストウッドが映画化するのだが、アメリカ側から見 たバージョンと日本側から見たバージョンの2作が製作されている。栗林の役は、渡辺謙が演じる。なんとなーくイメージが違うけど、ハリウッドに名が通る役 者は、彼だけなのだろう。 戦時中の人々の生活、想い、愛、悲しみ、青春・・・、ステレオタイプ的なイメージをこの本は、払拭する。 散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道 梯 久美子 (著) 出版社: 新潮社 ; ISBN: 4104774014 ; (2005/07/28) 栗坊の本棚へ |
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