2012 02,05 15:23 |
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クリント・イーストウッド監督の新作。初代FBI長官の人生を描く。主役のレオナルド・ディカプリオは、本当にいろんな役をこなすなあ。演技力あるのに、アカデミー賞は縁遠いんだよねえ。
盗聴や諜報活動で有力者のスキャンダルを牛耳り、大統領をも影で脅していたという曲者。当然、敵も多いし、危ない橋を渡っている。そのはずのに映画ではいとも簡単に行え、緊迫感も緊張感もない。同監督の『チェンジリング』にあったあのスリリングな演出は見る影も無い。 エドガーの秘書の関係、エドガーと副長官の関係、エドガーと大統領、上院議員との駆け引き、どれも中途半端だ。 多くの興味深いネタに溢れているのにもったいなあ。もっと鋭く突っ込んで欲しかった。 悪名高いエドガーだが、科学調査の導入や州を超えた連邦捜査のFBI を作った功績は大きい。 それにしても人間の人格形成に母親の存在は、大きいなと感じた。 せっかくの題材が緊迫感のない中途半端なドラマになってしまい残念きわまりない。 栗3つ。TOHOシネマズ六本木ヒルズにて。 |
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2012 01,03 12:00 |
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コメディ映画としても超一級。語り草になっている有名なボクシングのシーンは、抱腹絶倒だ。何度観ても面白い。スラップスティックな喜劇の中に、切ないけどちょっとロマンチックなラブ・ストーリーも繰り広げられる。盲目の花売り娘に恋する主人公は、一途な健気さの中に金持ちの虚像を纏った虚栄心でしか親しくなれない。 そして、映画史上もっとも切なく、絶望的で残酷でありながらも人間の優しさへの希望を託したラストシーンは、何度観ても鳥肌が立つ。声の無い台詞と二人の表情がいつまでも胸に突き刺さる。 栗5つ。映画が成し遂げた美しい奇跡の一編。 有楽町スバル座にて。
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2011 12,24 13:41 |
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お馴染みのテーマ曲にのり、オープニング・クレジットがあるのはいいね。最近のハリウッド大作は、オープニング・クレジットが無いからねえ。 「ボーン・アイデンティティー」シリーズでCGを使わない原点回帰のアクション映画がやっぱり面白いということで、ハリウッド映画がまた昔の形に戻ってきている。体を使ったバトルやカーチェイスなどが満載だ。ただ、「ボーン」シリーズの度迫力カーチェイスに比べると正直見劣りする。 それでもトム・クルーズは、がんばっている。本人自ら挑戦した世界最高層のビルでのスタント、砂嵐の中の追跡劇などドバイでのシーンは見所満載だ。 ただ、ストーリーには一作目のようなひねりが無い。裏切りや複雑な人間関係も無く、また緊張感も乏しい。 硬派に徹した「ボーン」に対して、コメディー・センスも加味したちょっと軟派なところが多くの人に受け入れられるだろう。 栗3つ。単純に楽しめる娯楽作。 TOHOシネマズ日劇1にて。 |
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2011 12,19 22:44 |
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時代の雰囲気があまり出ていなく、収容所の場面に緊張感も恐怖も無い。ナチスと交わる場面もびっくりするくらい淡々としている。 あんな過去を持っていれば、その後も幸せに生きられるはずはないというのはひしひしと伝わる。 主演のクリスティン・スコット・トーマスは、相変わらず上手だが、それ以外の俳優がそれほどでもない。 僕は、日本版の予告編を観ていなかったけど、今Youtubeで観てみたら随分と物語の急所となるべき場面がこれでもかと流れている。予告を観た人には、それ以上のものは無いと思う。 サラとその弟の顛末が分かるまでは、それなりに見せるが、それが分かって以降、物語の中心が現代になってからは、いたって普通の展開。ラストも予想通り、えっ、そんな陳腐な終わり方なの?って感じ。そして、それを感動的にするだけの演技と演出力が無い。 先日、「ジュリア」を観ただけに、胸に刺さるものが無いなあ。 もっと、すごいものを期待していたよ。期待値を超えず、普通の出来。栗3つ。 銀座テアトルシネマにて。いや、そんなにひどい映画じゃないよ。過度の期待をしなければ。 「ひまわり」のリバイバルに行けば良かった。そっちで思いっきり泣きたい。 ネタがバレバレの日本版予告編ではなく、海外版の方がいいよ。 |
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2011 12,16 23:58 |
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細かい所はいろいろと不満が残るが、今年のアメリカ映画では恐らく最高の一本。久しぶりにブラッド・ピットがすげえなと思った。
野球のことは、全く分からないが、それでも奇跡の20連勝の場面は感動的だ。 ヤンキースなど金持ちチームがその資金力を武器にせっかく育てた有望な選手をどんどん引き抜いてしまい、貧乏チームはいつも優勝できない。それを打破するために取り入れた統計と数学によるセイバーメトリクスを用いて弱小チームであるオークランド・アスレチックスを強靭なチームに変えていった実話に基づく物語だ。 野球のことを知らなくても映画はものすごく面白い。チームを変えるために、固陋で保守的なスタッフをズタズタと切っていくその様は、見てていて心地良い。これは、スポーツだけでなく、ビジネスでも言える。これまでのやり方にこだわって、そこから抜け出せない組織は死ぬ。 ブラッド・ピットは、最高の演技を見せる。これでアカデミー賞が取れなきゃ、可哀想だ。補佐役のジョナ・ヒルもいい味を出している。ピット演じる主人公の悲哀は、本当に良く描かれている。 一方でもう一つの主役であるはずの選手陣は、パッとしない。トレードの駒として人間のように扱われない彼らの人生にも何人かスポットが当たれば、映画としてより深みが出たと思う。 それにしてもプロ・スポーツは、もはやスポーツでなくビジネスなんだと改めて感じる。セイバーメトリクス手法は、他球団も真似しだし、ボストン・レッドソックスは優勝してしまう。 映画は、チームの絶頂期を描いているが、現在のアスレチックスは低迷期らしい。一度は、革命的だった手法もいつのまにか平凡なものになり、次の変革が求められるのかもしれない。 この手法が良い悪いは別として、組織は変革しないと死ぬことを教えてくれるとてもいい映画だ。 栗4つ。ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン5にて。 |
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2011 12,10 22:25 |
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今やノーギャラでも出たいという俳優続出の名匠にまでなったスティーブン・ソダーバーグの新作。群像劇でそれぞれ出番は短いのに、大スターが大挙として出演している。それにしても、毎回毎回違った作風の映画を演出するものだ。
今回は、ウィルスに侵されてゆく世界を描く。アクション、エンターテイメントな『アウトブレイク』(これはこれで娯楽作として傑作だけど)に比べるとまるでドキュメンタリーのよう。恐ろしいまでのリアリティーだ。こういう時、人間ならこんな行動にでるだろうなと、どんどん引き込まれて行く。それを可能にしているのが俳優陣の演技だ。圧巻は、ケイト・ウィンスレットとグゥイネス・パルトロー。この二人の演技だけでも見る価値あり。良い役者が出ているとそれだけで映画は、ものすごいパワーを持つ。 往年の映画ファンには懐かしい、エリオット・グールドも出ている。ただ、エンドクレジットを見るまで気がつかなかった。(笑) ものすごくドラマチックな展開はないけれど、忍びよる見えない恐怖の演出には唸らされる。 栗4つ。ユナイテッド・シネマ豊洲 スクリーン9にて。 |
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2011 12,08 20:19 |
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これは、心に染みたなあ。今回の川谷拓三映画祭で一番楽しみにしていた作品だ。ちょっとフィルムの状態が良くなかったけど、かえってそのレトロな感じもいい味になっていたかも。
僕もついこの間までは、毎年映画館で100本以上映画を見ていたので、拓ボン演じるダンさんの気持ちはすごく分かるねえ。正直劇中の浅野温子よりも川谷拓三に恋しちゃう。 思わず苦笑しちゃうくらい微笑ましい『雨に歌えば』のオマージュのシーンは、拓ボンだから許しちゃう。他の俳優がやったら許さないって感じか・・・。(笑) 舞台になった沼津の映画館とかあの喫茶店とかまだあるのかなあ。ロケ地をふらっと旅してみたくなった。 ダンがシューマのために取ったラストの行動は、友情を超えて狂気の沙汰ではある。されど映画が生き甲斐で、それしかない孤独な男の寂しさが投影され、胸が締め付けられる。 ダンの過去が明かされる後半、この映画は、川谷拓三だからこそ成り立つことが分かる。彼以外のキャスティングはありえない。彼だからこそできた映画だな。 オープニング、街を失踪し映画館を目指すダン。映画ファンならこのオープニングの場面だけでノックアウトだろうな。 映画が大好きな人たちによる、映画ファンのための映画。 栗4つ。銀座シネパトス1にて。 終演後、ロビーに出たら仁科貴さんがいらしてた。それもジーンときちゃった。 |
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2011 12,08 18:00 |
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未見の作品がスクリーンで観られる嬉しさよ。おまけに拓ボン主演!
一般映画初主演を飾った前作に続き、再び主演の拓ボンだよ。こうした役って合うよなあ。そういうイメージなんだろうけどねえ、実は、「トラック野郎」では二枚目だったりして、本来はすごくかっこいいと思うよ。この作品でも下品だけどユーモアあってかっこいいけどね。 それにしても河内の人たちってこんな風に描かれて怒ったりしないのかなあ?心が広いんだなあ。 有名な「河内のオッサンの唄」をベースに、日常会話も喧嘩腰みたい、男も強いけど、さらに輪をかけて河内女は強いんだねえ。 一本気でみんなのリーダー役の拓ボンがかっこいい。 そして、最後の方に出てくる篠ひろ子がこれまたかっこいい。 内容は、強引すぎるけど、昔の横浜の風景などが懐かしく、またスクリーンではなかなか観られない貴重な機会だったなあ。 栗3つ。 銀座シネパトス1にて。
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2011 12,03 23:50 |
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少女時代のリリアンとジュリアの友情、大作家ダシール・ハメットとの共同生活、作家としての成功と挫折、忍び寄るナチスの影と多くの要素を取り入れながらもそれぞれが驚くほど融合し、互いに共鳴して一つの物語として紡がれている。人生のドラマとしても、大人のラブ・ロマンスとしても、そしてサスペンス映画としても良くできている。 圧巻は、ナチス・ドイツに支配されたベルリンへ単身乗り込むユダヤ人のリリアン役のジェーン・フォンダとジュリア役のヴァネッサ・レッドグレーブの演技。本当にものすごい過去と困難を乗り越えて再会したような、映画史上最高の名場面の一つだろう。どうすればこんなすごい演技ができるのか、人間が表現できる最高のものの一つがこのベルリンのカフェのシーンにある。 ジェーン・フォンダは、この映画の演技と、『チャイナ・シンドローム』の演技が一生忘れられないなあ。 戦争によって引き裂かれてゆく友情、自分さえよければ良い人間たちの中で信念を貫き通す人々、子供の頃初めてこの映画を観た時の衝撃は、今も鮮明だ。 オープニング・シーンの構図も秀逸。栗5つ。 午前10時の映画祭 TOHOシネマズみゆき座にて。
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2011 12,02 21:50 |
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ジョージ・ハリソンの生涯を追ったドキュメンタリー。ビートルズ好きにはたまらない内容だ。というわけで僕にとってもたまらない。
インタビューで出てくる人たちが皆すごい。向こうのスターたちってのは、結構言いたい放題だね。またよく喋るねえ。元仲間のポール・マッカートニーの話は普通だったけど、リンゴは良かったねえ。なんかリンゴが一番人格者に思えたよ。ただ、リンゴとフィル・スペクターがなんか「ラ・カージュ・オ・フォール」みたいになってたけどねえ。 それとインタビューの聴きものは、やっぱりエリック・クラプトンだねえ。親友なんだけど、ハリソンの女房パティを略奪しちゃう、まあ有名な話だけど、その辺もオープンに話していた。 「モンティ・パイソン」系でいうと、エリック・アイドルがテレビで観ていた頃より体積が二倍になっていてびっくりした。年月というのはいろんなものを変えるのだね。 確かにビートルズ時代、また解散後「オール・シングス・マスト・パス」は大ヒットしたものの、やはりポールとジョンの影に隠れていた印象がある。しかし、良い曲いっぱいあるね。映画の中でもたくさん流れるけど、もっと聴きたいと思った。 前半後半と合わせて3時間半あるけど、あっという間だったね。58年間の人生とは思えないくらい。いろんなことがつまっている。多くの人は、100年生きたとしてもこんなに充実しないよな。まあ、つらいこともたくさんある波瀾万丈な人生であるけど。一度セレブになると、集まってくる人々も超セレブ。次々と画面に現れてくる面々がなんともすごく、それらを含めた記録映像としてかなり貴重だと思う。 ただ出来としてどうかというと、ちょっと物足りない。時系列に追っただけで、もうすこし何かが欲しかった気がする。 近くにいたカップル。年配の男性が無理矢理恋人の女性を連れて来ていたが、ビートルズに何の関心も無さそうなその女性は、終始退屈そうだった。画面に出てくる人もほとんど知らない感じで、そういう人にはつまんないかもね。 かなり、ターゲットがしぼられる映画だとは思う。興行側もそれは分かっていて当初2週間の限定公開だったみたいたけど、ヒットしているのでもうちょっと上映するみたい。しかし、一日2回しか上映できないから、そもそも2週間じゃ、少ないよねえ。 栗3つ。ハリソン好き、ビートルズ好きなら必見。 角川シネマ有楽町にて George Harrison: Living In The Material World
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