2013 06,02 22:44 |
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最近ありがちなパターンの映画。人類が滅亡した地球に残された主人公、何故? 謎を散りばめる前半、その謎が解けるまでの設定は期待をつのらせる。
しかし、謎が全て分かった時点で、あとはいつもの予定調和。ドキューン、バキューン、CG、CG、CG・・・。 それにしても、主人公の正体、エイリアンの正体、謎解きの設定、どれもこれも過去の映画で繰り返し使われてきたプロットばかり。もう新しいアイデアなんというものは生まれてこないのかねえ。 モーガン・フリーマンが、全く光ってないねえ。つまんない役を引き受けたもんだ。 まあ、この手の映画を観るなら映画館の大きなスクリーンでということか。主人公が住んでいる家のインテリアやデザインが素敵。あんなプールがあったら泳いでみたい。 栗2つ。それにしてもここまで過去の映画のパクリ集大成だとあきらめがつくね。そして、これも911以降ありがちな、妙に家族愛とか人間愛とかをお涙頂戴っぽく入れてくる最近のアメリカ映画は本当に苦手だ。娯楽に徹するとか、残酷な結末を突きつけ嫌な余韻を残すとか、そっちの方が好きだなあ。見終わった後、何も残らない。 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン10にて。 |
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2013 04,13 23:39 |
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よくもこんな脚本が書けたものだ。日常に潜む狂気と孤独と自己欺瞞を見事に台詞に凝縮させたよなあ。次にどんな映画を作るのか、ポール・トーマス・アンダーソンは、今一番楽しみな脚本家であり監督だ。
映像がこれまたすごいけど、ちょっとテレンス・マリックみたいになってきたなあ。冒頭の海の場面、そして主人公の心の内を吐露するような不思議な音楽のシンフォニーは、これまたマリック風。 新興宗教の教祖という設定はさておき、自分とは全く違う人間に惹かれ合うというのは分かるなあ。それもその関係がリスキーなほど不思議な酔いが生まれる。惹かれ合う磁石は、いつかは反発していく、これはなんか使い古されたプロットだけど、それさえ吹き飛ばしてしまう俳優陣の演技がこれまた魅力的だ。 ちょっとマイナスなのは、マスターに惹かれるほどこの主人公はインテリの欠片もなく粗野過ぎて、ちょっと違和感があったなあ。あと、ホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンの演技の応酬は、噂通りすごいのだけど、前作「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のダニエル・デイ・ルイスとポール・ダノの方があまりに強烈過ぎたので、それと比べてしまうとそれほどの驚きは無かったね。 それにしても、アメリカって雑魚映画だけじゃなく、こうした見終わった後も脳味噌の片隅に鋭い杭を打ち居座り続ける映画を作るところがすごいよなあ。 栗4つ。映像美と音楽に酔いしれながら、人生を考える。 TOHOシネマズ シャンテ スクリーン2にて。 |
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2013 01,28 19:47 |
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10年に1本くらい、観客を魔法にかける映画が現れる。この映画がまさにそれ。オープニング・クレジットから監督のアン・リーは、魔法をかける。美しい映像と斬新な技法に視覚が刺激され、心躍り、満面の笑みでスクリーンを見つめることになる。
そして、この映画は、絶対に映画館で3Dで観た方がいい。これまでの3D映画は、何故わざわざ3Dに?というものが多かったけど、この作品では、奥行きというものを効果的に利用した斬新映像テクニックに圧倒される。動物も、風景もCGだと分かっているのに、それをも忘れさせるほど素晴らしく、そして美しい。 海と空がつながる3D映像は、海洋生物が空を飛んでいるような錯覚を覚える。 様々なアイデアが満載で、海の上での漂流場面も飽きさせない。実際のサバイバル方法にもとづいて脚本が書かれたらしい。 この映画には、人生と真実の残酷な側面も描かれているが、そうした残虐性はオブラートにつつみ家族でも観られる作品に仕上がっている。エンドクレジットも3Dを活かし、美しい。 栗4つ。魔法の時間を満喫すべし。 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン10にて。
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2013 01,26 15:25 |
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現代の自分と30年後の自分とのスリリングな戦いと、予告でタイムトラベルもののパラドックスを活かした展開をあおっていたけど、実際はかなり拍子抜け。確かに、前半は、面白いプロットでいったいどうなるのだろうと大いに期待を持たせていた。
しかし、後半物語は一転する。タイムトラベルの面白さを活かした展開は、どこへやら。物語は、陳腐なラブストーリーと「キャリー」や「スキャナーズ」みたいな超能力者映画に変貌。自分自身との戦いは、どこへ行ったの? はあ? タイムトラベルものの傑作ニコラス・メイヤーの「タイム・アフター・タイム」やブライアン・デ・パルマの「キャリー」を別々にそれぞれ観た方が数百万倍面白い。 最近の映画にありがちなプロットは面白いのに、展開や結末が考えられず強引なラストとお涙頂戴に走っている駄作群の一作。 栗1つ。ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン11にて |
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2012 12,29 23:49 |
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久しぶりに退屈きわまりない映画を観た。今年一番の期待はずれ。 舞台の単なる映像化に過ぎず、映画的な醍醐味はかけらも無い。監督は、バズ・ラーマン?と思ってしまうような「ムーラン・ルージュ」的なしょぼいパリのセットやCG、迫力が微塵もない学芸会の出し物のようなバリケードの暴動シーンなどどれもしょぼすぎる。 そもそも冗長な展開と、人物描写が希薄な演出で、登場人物のどいつもこいつも印象に残らない。 舞台で生オケーストラで、その場で歌を聴けばとても良い作品だと思うけど、ただ映画にしただけでなんの工夫も、新たなテイストも無く退屈で退屈で、何度も途中退出したくなった。 まあ、そもそもダンス・シーンのないミュージカル作品は嫌いなんだけどね。またブロードウェイ・ミュージカルは大好きで何度も本場で観ているから、ただ映像化するくらいであれば、生の舞台の方が圧倒的に素晴らしい。映画化するのであれば、映画でしかできない何かが欲しい。 とにかく退屈、3時間近くもこんなものに付き合うのは本当に時間の無駄。 栗1つ。新宿ピカデリー スクリーン1にて。 |
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2012 12,01 22:50 |
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待ちに待った「007 スカイフォール」を初日に観てきた。007映画化50周年記念のこの作品は、ファンなら思わずニンマリとしてしまうシーンが散りばめられている。ああ、話したいけど、これから観る方のために我慢するよー。 今回もオープニングからド迫力アクションが展開。これは、ちょっと「ボーン・アイデンティティー」シリーズにかなり影響されてか、最近この手のアクション映画が、CGではなく昔ながらのスタントが復活して嬉しい限りだ。このオープニング・シーンだけで、もう手に汗握る大迫力。そして、主題歌は、アデル。こちらも今旬なシンガーをおさえているね。 監督は、「アメリカン・ビューティー」のサム・メンデスだけに、ユーモアの中にやっぱり残虐性と重たい人間ドラマが横たわる。ダニエル・クレイグになってから、結構重々しい雰囲気はあるよね。何やら秘めた冷たい007の過去がだんだんと明かされて行く感じ。 悪役は、性格俳優のハビエル・バルデム。「羊たちの沈黙」のアンソニー・ホプキンスばりに怖い。一方、ボンド・ガールは活躍が少なかったねえ。あまり魅力的でも無かったし。実は今回のボンド・ガールは、ジュディ・デンチじゃないかしら。ガールじゃないけど・・・。 まあクレイグのボンド一作目の「カジノ・ロワイヤル」を超えるほどではないが、、文句なく楽しめる作品だ。早く次の作品を観たいな。もちろん、ダニエル・クレイグで。惚れてしまうほどかっこいい。スーツは、前作から変わらず今回もトム・フォード、ボンドは、やっぱりスーツだよね。
栗4つ。新宿ピカデリーにて。 現在、なりきりボンドキャンペーンが展開中です。僕もやってみた。(笑) http://narikiri-bond-pia.jp/ |
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2012 10,05 14:18 |
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この映画は初めて観た。70年代のテイストがいっぱい。ブラックでグロテスクな笑いに溢れ、大いに笑わせてくれるが、最後に残酷な結末が待っているという、まさに70年代の映画だぜ!
キャット・スティーヴンスの歌が全編に散りばめられているが、これも70年代ぽいなあ。「If you want to sing out, sing out」の詞がいいんだよねえ。 狂言自殺を続けて母親を困らせつづける19歳の少年ともうすぐ80歳になる人生を謳歌している老婆とのラブ・ロマンス。友情というならまだ分かるけど、愛情に変わって行く後半は、やっぱりちょっとついて行けないなあ。 天真爛漫、自由奔放でやりたい放題で楽しそうな老婆の過去が明かされる夕暮れの場面の美しさが胸に突き刺さる。ここで終わっていたら栗5つだったんだけどなあ。 残酷一辺倒で終わるかなと思ったら、ラストにはちょっぴり生きる希望が・・・。 ぶっとんだすごい映画だけど、生きることの意味を考えさせられる。70年代のアメリカ映画って本当にすごかったなあ。 栗4つ。新文芸坐にて。
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2012 10,05 13:19 |
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溜め息ばかりで言葉も出ない、美しすぎる映像にうっとりと陶酔してしまう。今回、スクリーンで見直してみて、さすがに初めて観た時の感激とまでは行かないけど、映画史上、一つの到達点に辿り着いた珠玉の名作だ。どこを切り取っても一枚の絵画のように美しく、人物、人工物、自然までも完璧な構図に度肝を抜かれる。有名な映画俳優がノーギャラでもテレンス・マリックの監督作品に出演したいと言うのは至極納得だ。
主演はリチャード・ギアだが、存在感・演技で圧巻なのがサム・シェパードだ。静かで理知的だが徐々に抱く疑念がクライマックスの火災のシーンで一気に爆発して燃え上がる。 不況と貧困が招く悲劇ではあるが、愛の形としてはものすごく歪んでいる。 日没から完全に夜になるまでの20分間で撮影された美しい大自然、風になびく麦畑、農場にぽつんと建つ農場主の家、映像と音楽が完全なる調和を奏でるまさにシンフォニーだ。 栗5つ。新文芸坐にて。
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2012 09,30 18:37 |
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子供の頃観た時は、怖くて怖くてしょうがなかったけど、今観てもやっぱい怖いなあ。何度も観ている映画なので、展開は全て分かっているのに怖い。すごい映画だよねえ。
子供の頃は、分からなかったけど、そうそうたるメンバーが作品にかかわっている。製作は、ウォルター・ヒル、当初自分で監督するつもりだったそうだけど、新人のリドリー・スコットにやらせることに。そしてこれが、彼の代表作となる。脚本は、ダン・オバノン、その後も「バタリアン」とか「ブルーサンダー」とかアイデアがいい作品を書いているけど、これがやっぱり傑作だよね。そもそも脚本では、リプリーは男性をイメージしていたとか。 音楽は、ジェリー・ゴールドスミス。この人は天才だよなあ。すごく心に残る美しいメロディーというよりは、チャールトン・ヘストンの「猿の惑星」とか、不思議な旋律で異空間を作り出すのがすごい。演出もあるけど、彼の音楽が一層映画を怖くしている。 そして、なんと言ってもエイリアンをデザインしたH.R.ギーガー。映画史上最も恐ろしく、そして最もクールなクリーチャーを創造した。 シガーニー・ウィーバーがこの映画でスターの仲間入りをしたけど、すごいのはイアン・ホルムだね。「炎のランナー」より、断然こっちの演技がすごいわ。なんかずっと優しげなおじさんのイメージがあったけど、この作品ではクールでちょっとかっこいい。そして実は恐ろしい。 とまあ、当時無名な人もいたけど、それぞれにその頃の最高の才能が集まって、ものすごい映画ができたよな。宇宙空間の宇宙船という閉塞感がいいんだろうな。エイリアンが飛び出す食事のシーン、蒸気と光と闇が交錯する中に現れるメタリックなエイリアン。何度観ても惹き込まれるし、何度観ても怖い、怖い、怖い。すごい映画を作ったものだ。 その後、何作か続編が作られたけど、どれもこの第一作を越えられないね。栗5つ。 もう何度でも映画館で観たいよー。 午前10時の映画祭、TOHOシネマズみゆき座にて。
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2012 09,09 23:51 |
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大好きな監督ビリー・ワイルダーの傑作。
往年の大女優が過去の栄光に囚われて狂気の沙汰を現実で演じる側面ばかりが評されているが、4人の主要登場人物の歪んだ愛がものすごい。 仕事が上手くいかず借金が返せない若い脚本家の男は、たまたま迷い込んだかつての大女優の邸宅で、女主人の愛が重くのしかかるも、その手から逃れられない。まるで安部公房の小説のような不思議な展開。 それでも、「誰もが冷たいハリウッドで、彼女だけは優しかった」と断ち切れない想いに揺れ動く。 かつての大女優は、昔の栄光に今も酔いしれている。現実は見えず、金という力で男を囲う。哀れみはいつしか真実の愛に変わって行く。しかし、それはものすごく狂気じみていて恐ろしい。 若い脚本家の女は、野心に燃え、男の脚本家を利用してのし上がろうとする。婚約者がいるにもかかわらず、それは愛へと変わって行く。 女優の狂気の演技がものすごいので忘れがちだが、一番倒錯していて狂気じみているのは、この家の執事だ。最後の方で関係が明かされるが、一番歪んだ愛の形を見せつけられる。 四人四様のエゴがむき出しになるが、大女優の話ばかり語り継がれるのは、グエン・スワンソンの度肝抜く名演技に尽きる。 自分だけが可愛い人間のおぞましさの中に他人への歪んだ愛が垣間見えるものすごい作品。 栗5つ。 午前10時の映画祭 TOHOシネマズみゆきざにて。
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