2012 10,05 13:19 |
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主演はリチャード・ギアだが、存在感・演技で圧巻なのがサム・シェパードだ。静かで理知的だが徐々に抱く疑念がクライマックスの火災のシーンで一気に爆発して燃え上がる。 不況と貧困が招く悲劇ではあるが、愛の形としてはものすごく歪んでいる。 日没から完全に夜になるまでの20分間で撮影された美しい大自然、風になびく麦畑、農場にぽつんと建つ農場主の家、映像と音楽が完全なる調和を奏でるまさにシンフォニーだ。 栗5つ。新文芸坐にて。
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2012 09,30 18:37 |
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子供の頃は、分からなかったけど、そうそうたるメンバーが作品にかかわっている。製作は、ウォルター・ヒル、当初自分で監督するつもりだったそうだけど、新人のリドリー・スコットにやらせることに。そしてこれが、彼の代表作となる。脚本は、ダン・オバノン、その後も「バタリアン」とか「ブルーサンダー」とかアイデアがいい作品を書いているけど、これがやっぱり傑作だよね。そもそも脚本では、リプリーは男性をイメージしていたとか。 音楽は、ジェリー・ゴールドスミス。この人は天才だよなあ。すごく心に残る美しいメロディーというよりは、チャールトン・ヘストンの「猿の惑星」とか、不思議な旋律で異空間を作り出すのがすごい。演出もあるけど、彼の音楽が一層映画を怖くしている。 そして、なんと言ってもエイリアンをデザインしたH.R.ギーガー。映画史上最も恐ろしく、そして最もクールなクリーチャーを創造した。 シガーニー・ウィーバーがこの映画でスターの仲間入りをしたけど、すごいのはイアン・ホルムだね。「炎のランナー」より、断然こっちの演技がすごいわ。なんかずっと優しげなおじさんのイメージがあったけど、この作品ではクールでちょっとかっこいい。そして実は恐ろしい。 とまあ、当時無名な人もいたけど、それぞれにその頃の最高の才能が集まって、ものすごい映画ができたよな。宇宙空間の宇宙船という閉塞感がいいんだろうな。エイリアンが飛び出す食事のシーン、蒸気と光と闇が交錯する中に現れるメタリックなエイリアン。何度観ても惹き込まれるし、何度観ても怖い、怖い、怖い。すごい映画を作ったものだ。 その後、何作か続編が作られたけど、どれもこの第一作を越えられないね。栗5つ。 もう何度でも映画館で観たいよー。 午前10時の映画祭、TOHOシネマズみゆき座にて。
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2012 09,09 23:51 |
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往年の大女優が過去の栄光に囚われて狂気の沙汰を現実で演じる側面ばかりが評されているが、4人の主要登場人物の歪んだ愛がものすごい。 仕事が上手くいかず借金が返せない若い脚本家の男は、たまたま迷い込んだかつての大女優の邸宅で、女主人の愛が重くのしかかるも、その手から逃れられない。まるで安部公房の小説のような不思議な展開。 それでも、「誰もが冷たいハリウッドで、彼女だけは優しかった」と断ち切れない想いに揺れ動く。 かつての大女優は、昔の栄光に今も酔いしれている。現実は見えず、金という力で男を囲う。哀れみはいつしか真実の愛に変わって行く。しかし、それはものすごく狂気じみていて恐ろしい。 若い脚本家の女は、野心に燃え、男の脚本家を利用してのし上がろうとする。婚約者がいるにもかかわらず、それは愛へと変わって行く。 女優の狂気の演技がものすごいので忘れがちだが、一番倒錯していて狂気じみているのは、この家の執事だ。最後の方で関係が明かされるが、一番歪んだ愛の形を見せつけられる。 四人四様のエゴがむき出しになるが、大女優の話ばかり語り継がれるのは、グエン・スワンソンの度肝抜く名演技に尽きる。 自分だけが可愛い人間のおぞましさの中に他人への歪んだ愛が垣間見えるものすごい作品。 栗5つ。 午前10時の映画祭 TOHOシネマズみゆきざにて。
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2012 08,25 14:15 |
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相変わらずのアンドロイドが同じ役割として出てくるのも、そろそろアイデア枯れ。まあ、「エイリアン」シリーズというのを強調したいんだろうけど。笑っちゃうのが、今回のアンドロイドのモデルがピーター・オトゥールだということだ。 物語も「エイリアン」と「エイリアン2」のパロディーという感じで、新しいものは何一つない。脳みそが悲鳴をあげるほど怖かった「エイリアン」の恐ろしさや緊迫感は微塵も無いし、「エイリアン2」のはらはらドキドキしたアクションシーンと比べてもかなり地味。何から何まで中途半端。 あと、展開が早すぎ。いきなり遺跡の謎の壁画が見つかり、すぐ宇宙へ出発。もう少し、人類誕生の起源を追う背景の場面が欲しかった。惑星に着いてもいきなり目的地が見つかるし、せっかく起用しているシャーリーズ・セロンも大した見せ場もなく残念。 何から何まで残念だけど、そもそも脚本がお粗末なので、もうどうやっても無理だね。監督がリドリー・スコットだけに、あの「エイリアン」の衝撃をもう一度と期待したけど、ダメだった。 栗2つ。ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン1にて。 「エイリアン」の一作目をもう一度大スクリーンで観たい。 あ、ちなみにエンドクレジットであらわれるWeyland Industryのホームページは、事前のキャンペーン・サイトとしては良く出来ている。 https://www.weylandindustries.com/ |
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2012 08,12 21:59 |
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ストーリーや登場人物は、前作をかなり踏襲しているが、設定はちょっと変更されている。また前作を観ている人が気付けばにんまりとしそうな場面も結構ある。 映像(CG技術)は格段に進化していて奇麗ではあるが、労働者の町は「ブレードランナー」ぽいし、金持ちの街は「フィフス・エレメント」か「マイノリティー・レポート」の模倣な感じ。 今回は、火星が登場せず、地球の裏表が舞台。地球の裏から地中を抜けて通勤するのがウケた。 前作と比べていまいち高揚感が高まらなかったのは、音楽だと思う。前作の音楽は、ジェリー・ゴールドスミス。正直、前作でも一番印象に残ったのは音楽だなあ。オープニングから音楽で惹き込まれたもんなあ。今回の音楽はなんか地味で大作感で出てないね。 栗3つ。まあ楽しめる。ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン10にて。 |
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2012 07,28 23:07 |
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前作にはあった人間の内面の弱さにつけこんだ駆け引きやヒース・レジャー演じるジョーカーのような鳥肌ものの悪役も出て来ない。ベインは、なかなかにがんばっていたと思うけど、ヒースに比べると魅力薄。 そもそもこれまでの主要人物がほとんど活躍しない。ゲーリー・オールドマンも早々と病院送り、マイケル・ケインも途中からほとんどいなくなっちゃうし、そもそもバットマンがあんまり出て来ない。 つっこみどろこも満載。いくらなんでもあんなに痛めつけられた人間があんな場所で回復しないでしょ?それから核爆弾の扱いが杜撰すぎ。キャット・ウーマンはかっこ良く描かれているけど、彼女の過去や抱える悩みなどは全く表現できておらずキャラクター設定は失敗。 物語を終わらせるがための脚本は正直残念だ。クライマックスは、ただのアクション映画。橋を利用した閉鎖空間を出したいためか、ロケ地が前作のシカゴからニューヨークになっていた。 ラストのどんでん返しも一作目と同じじゃんって感じでちょっと拍子抜けだ。 ただただ、マイケル・ケインの演技には脱帽。この人は、やっぱり凄いなあ。他の役者が霞んでしまうよ。 あえて無理矢理な完結編を作る必要もなく、「ダークナイト」で終えておけば良かったのに。とはいえノーラン兄弟はとても才能があるので、次回作、全く別なものに期待しよう。 栗3つ。どうしても前作と比べちゃうとねえ。あ、そうそう「戦場のメリークリスマス」で日本にはお馴染みのトム・コンティが出ていたよ。懐かしかったねえ。 新宿ピカデリー1にて。 |
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2012 07,21 23:16 |
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アメリカでは当時映画史上2位の大ヒットになったけど、日本ではそれほどヒットしなかった。暗い画面、重苦しい内容だったからかなあ?でも日本でも「スパイダーマン」はヒットするのにねえ、なんでこの作品はダメだったんだろう? 「ダークナイト」のすごいところは、人間の弱さにつけこみ善人すら悪人にしてしまうというジョーカーの手口。まさにそれが人間の本性だと突きつけられて胸が痛くなる。仲間すら信用することができないなか、二転三転するストーリーにハラハラドキドキする。 単なるヒーロー映画ではなく、骨格にしっかりとした人間ドラマがあり、また決してバットマンが超人的ではなく、人間としての悩みを抱えているところがすごい。加えて、香港の摩天楼でのアクション、夜の街を疾走するカーチェイスと迫力満点のシーンも多々あり、これはやっぱり映画館の大画面で観たいもの。 アクション映画も、映像ではなく、要はやっぱりストーリー、脚本なんだと実感。 とにかくすごい映画。栗4つ。丸の内ピカデリー3にて。 なお、新作「ダークナイト ライジング」公開の前日まで、前2作の上映が全国で実施されている。
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2012 07,15 15:43 |
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今作は、つっこみどころ満載のアクション・アドベンチャーになっているよ。それでもこの間の「アメージング・スパイダーマン」よりは面白かったなあ。とにかく2時間飽きなかったから。 主役は、「トワイライト」の大ヒットでハリウッド女優一のギャラを得るようになったクリスティン・スチュワート。悪の魔女で継母にシャーリーズ・セロン。それ以外は、知らない人ばかりと思っていたら、7人の小人の中にボブ・ホスキンスがいたよ。エンドクレジットが出るまで気付かなかった。 グロテスク感とアクション・シーンは満載だけど、オマージュなのかパクリなのか、いろんな映画を彷彿させる場面がたくさん。全体的雰囲気は、「ロード・オブ・リング」、鏡の中から出てくるのは「ターミネーター2」の悪役、シャーリーズ・セロンは、「スペース・バンバイア」並に人間の若さを吸いまくり、「もののけ姫」のシシ神様も特別出演し、「ハリーポッター」に出てくる妖精みたいなものも登場し、最後は、白雪姫が「ジャンヌ・ダルク」ばりに大活躍さ。 栗3つ。TOHOシネマズ日劇3にて。まあ、アクション大作らしい映画だよ。
それより、やっぱりシャーリーズ・セロンの方が奇麗だと思うのよ。
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2012 07,07 21:45 |
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ベースとなるストーリーは、前シリーズとほぼ同じだけど、親友であり会社の重要な人物であるオズボーン一家は、台詞上の名前しか登場しない。 恋人役は、メリー・ジェーンは出てこず、グウェン・ステイシーだけ。 一番期待されたニューヨークの街を飛び回るシーンは、奇麗な夜景に置き換わり3Dになっているものの、迫力は前シリーズの方があったね。 クライマックス・シーンも「トランスフォーマー」の縮小版と言った感じで、手に汗握る展開だった前シリーズ一作目のルーズベルト島のロープウェイの場面に比べると拍子抜け。 決してつまらなくないけど、サム・ライミ版の方が楽しくて面白かったなあ。メリー・ジェーンとの逆さキスシーンとか、グリーン・ゴブリンのニューヨーク破壊場面とか、前作の方が見応えがあったね。 混んでいるかなあと思い新宿ピカデリーのプラチナ・シートで観てみた。これまでユナイテッドシネマ豊洲のプレミアシートが一番すごいと思っていたけど、それを上回るゴージャスさ。まずは、専用エレベーターでロビーへ。ラウンジは、ユナイテッドシネマより狭いけど、ゴージャスな雰囲気。ウェルカム・ドリンクがあるのは同じだけど、それ意外に用意されているメニューがすごい。1本10万円のシャンパン、1杯5000円のコーヒー、一般席とはそもそも別のフロアの王様的なバルコニー席とまあびっくり。値段もユナイテッドシネマ豊洲の倍の一席5000円。ここ銀座じゃないよ、新宿だよ。需要あるのかな?でも、優雅な雰囲気だし、席にはオットマンもあり靴を脱いで足を投げ出せるし、ブランケットもあり、飛行機のシートみたいだった。 さらに驚いたのは、二室個室がありそちらは二人で3万円なり。映画観るのに3万円は高いよねえ。ホテルに一泊できちゃうよなあ。 新宿ピカデリー スクリーン1 プレミアシートにて。 |
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2012 06,09 23:30 |
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往年の傑作「カイロの紫のバラ」を彷彿させるロマンティックなラブ・コメディー。ただ、「カイロ」に比べるとかなり笑いの度合いは少なく落ち着いた感じ。クスクス可笑しいけれどね。
冒頭のパリの案内シーンが美しすぎる。パリのあらゆる有名な場所が次々に現れては消えて行く。「ああ、ここ行ったことある」と多くの人が思うだろう。 誰もが羨むような生活をしているのに、現代の生活と現在の恋人にどこか満足できない主人公。恋人とその両親とで出かけたきたパリで、夜な夜な1920年代へとタイムスリップする。その手法がウディ・アレンらしく鮮やか。コール・ポーター、フィッツジェラルド、ヘミングウェイ、ピカソ、ダリなどその時代にパリにいた憧れの人物と出会い、ピカソの恋人だった女性と恋に落ちて行く。 尚古主義一辺倒だったウディが自ら結論を出すクライマックスは、そうした達観をする年齢になったのかなあとも思うし、それが人間で、それが人生なんだなあとひしひしと伝わる。 「カイロの紫のバラ」では身勝手な人間が残酷で悲しい結末を生むが、こちらの作品は、前向きで新たなスタートを気付かせてくれる優しい展開で終わる。「重罪と軽罪」「マッチポイント」「私の中のもう一人の私」など、人生の厳しく残酷で立ち直れないほどのつらいラストシーンを突きつけたきた作品もあったけど、今回はその点、見終わった後も重々しくない。僕は、残酷なラストの方が好きだけどね。 栗4つ。丸の内ピカデリー2にて。
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