2013 08,13 18:10 |
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ペストが万延している中世ヨーロッパのその暗黒時代とこの主人公一団に纏わりつく死神がなんとも時代を象徴していて秀逸だ。 中世にタイムスリップして、その場で物語を体感しているのではと錯覚する。 こういう映画を観ると、映画ってモノクロの方がいいなあと思ってしまうなあ。光と影がもたらす効果が強烈に脳に焼き付く。 生と死、そして神の存在を考えさせられる。 栗4つ。ユーロスペースにて。
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2013 08,13 15:35 |
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公開当時は、衝撃的過ぎてカットされたレイプシーンも今となってはもっとえげつない映画がたくさんあるし、復讐の殺戮もおとなし目な感じすらする。 それよりも何よりも、レイプされ殺される少女になんの哀れみも感じない。過保護で育てられた我が侭で嫌な性格の女で、こんなの酷い目に遭えばいいのにと思ってしまう。敬虔なクリスチャンと思いきや感情のおもむくままに何の葛藤もなく復讐に走る両親にも共感できない。 唯一感情移入できるのが下女だ。ずる賢く正直なところがいい。 あえて考えてみると、死んだ少女や娘を溺愛している両親の身勝手な姿が、これが人間の愚かさだよと見せられていたのかもしれない。 それでも、神の存在を云々するにはお粗末な内容だと思うねえ。そもそも中世で、少女だけで森に行かせるその設定が納得がいかないなあ。 公開当時は、衝撃的な作品だったんだろうけど、時代を超えられなかったと思うよ。 後味悪いし・・・。あ、ピレ・アウグストが好きそうだな、こういう映画。 傑作とは、とても思えない。 栗3つ。ユーロスペースにて。
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2013 08,13 13:38 |
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主人公の老医師が大学の名誉博士授与式のため、ストックホルムから大学のある街まで車で移動する。今で言うところのロードムービーなのだが、道中出会う人々と自身が見る夢の中で出会う過去・現在の人々との会話が可笑しくもあり、切なくもあり、時に辛辣で胸に突き刺さる。喜劇と悲劇は紙一重、些細な出来事と決断が人生を変えて行く。 冒頭すぐの最初の夢の場面でもう鳥肌が立つ。初めて安部公房の「壁」を読んだ時のような衝撃だ。死を予感するイメージと圧倒的な映像表現は強烈だ。 その後の老医師と家政婦との短い会話の中で、この主人公の固陋さ、身勝手さ、プライドの高さ、そして孤独を数分の場面で人物像を焼き付ける手腕は流石だ。 夢と現実が織物のように紡がれるストーリーの中で、人生、宗教、家族とは何だろうと考えさせられる。自分を見つめ直すというか、自分を初めて発見する旅のようだ。車中、主人公が一緒に旅する息子の嫁に「昨夜見た奇妙な夢の話をしようか」と問いかけると、彼女は「あなたの夢に興味なんかないわ」と応える。こういう台詞の応酬も憎いよなあ。 いつか自分が死ぬ時に、何を振り返るのだろう? 栗5つ。ユーロスペースにて。
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2013 06,02 22:44 |
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しかし、謎が全て分かった時点で、あとはいつもの予定調和。ドキューン、バキューン、CG、CG、CG・・・。 それにしても、主人公の正体、エイリアンの正体、謎解きの設定、どれもこれも過去の映画で繰り返し使われてきたプロットばかり。もう新しいアイデアなんというものは生まれてこないのかねえ。 モーガン・フリーマンが、全く光ってないねえ。つまんない役を引き受けたもんだ。 まあ、この手の映画を観るなら映画館の大きなスクリーンでということか。主人公が住んでいる家のインテリアやデザインが素敵。あんなプールがあったら泳いでみたい。 栗2つ。それにしてもここまで過去の映画のパクリ集大成だとあきらめがつくね。そして、これも911以降ありがちな、妙に家族愛とか人間愛とかをお涙頂戴っぽく入れてくる最近のアメリカ映画は本当に苦手だ。娯楽に徹するとか、残酷な結末を突きつけ嫌な余韻を残すとか、そっちの方が好きだなあ。見終わった後、何も残らない。 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン10にて。 |
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2013 04,13 23:39 |
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映像がこれまたすごいけど、ちょっとテレンス・マリックみたいになってきたなあ。冒頭の海の場面、そして主人公の心の内を吐露するような不思議な音楽のシンフォニーは、これまたマリック風。 新興宗教の教祖という設定はさておき、自分とは全く違う人間に惹かれ合うというのは分かるなあ。それもその関係がリスキーなほど不思議な酔いが生まれる。惹かれ合う磁石は、いつかは反発していく、これはなんか使い古されたプロットだけど、それさえ吹き飛ばしてしまう俳優陣の演技がこれまた魅力的だ。 ちょっとマイナスなのは、マスターに惹かれるほどこの主人公はインテリの欠片もなく粗野過ぎて、ちょっと違和感があったなあ。あと、ホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンの演技の応酬は、噂通りすごいのだけど、前作「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のダニエル・デイ・ルイスとポール・ダノの方があまりに強烈過ぎたので、それと比べてしまうとそれほどの驚きは無かったね。 それにしても、アメリカって雑魚映画だけじゃなく、こうした見終わった後も脳味噌の片隅に鋭い杭を打ち居座り続ける映画を作るところがすごいよなあ。 栗4つ。映像美と音楽に酔いしれながら、人生を考える。 TOHOシネマズ シャンテ スクリーン2にて。 |
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2013 01,28 19:47 |
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そして、この映画は、絶対に映画館で3Dで観た方がいい。これまでの3D映画は、何故わざわざ3Dに?というものが多かったけど、この作品では、奥行きというものを効果的に利用した斬新映像テクニックに圧倒される。動物も、風景もCGだと分かっているのに、それをも忘れさせるほど素晴らしく、そして美しい。 海と空がつながる3D映像は、海洋生物が空を飛んでいるような錯覚を覚える。 様々なアイデアが満載で、海の上での漂流場面も飽きさせない。実際のサバイバル方法にもとづいて脚本が書かれたらしい。 この映画には、人生と真実の残酷な側面も描かれているが、そうした残虐性はオブラートにつつみ家族でも観られる作品に仕上がっている。エンドクレジットも3Dを活かし、美しい。 栗4つ。魔法の時間を満喫すべし。 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン10にて。
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2013 01,26 15:25 |
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しかし、後半物語は一転する。タイムトラベルの面白さを活かした展開は、どこへやら。物語は、陳腐なラブストーリーと「キャリー」や「スキャナーズ」みたいな超能力者映画に変貌。自分自身との戦いは、どこへ行ったの? はあ? タイムトラベルものの傑作ニコラス・メイヤーの「タイム・アフター・タイム」やブライアン・デ・パルマの「キャリー」を別々にそれぞれ観た方が数百万倍面白い。 最近の映画にありがちなプロットは面白いのに、展開や結末が考えられず強引なラストとお涙頂戴に走っている駄作群の一作。 栗1つ。ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン11にて |
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2012 12,29 23:49 |
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久しぶりに退屈きわまりない映画を観た。今年一番の期待はずれ。 舞台の単なる映像化に過ぎず、映画的な醍醐味はかけらも無い。監督は、バズ・ラーマン?と思ってしまうような「ムーラン・ルージュ」的なしょぼいパリのセットやCG、迫力が微塵もない学芸会の出し物のようなバリケードの暴動シーンなどどれもしょぼすぎる。 そもそも冗長な展開と、人物描写が希薄な演出で、登場人物のどいつもこいつも印象に残らない。 舞台で生オケーストラで、その場で歌を聴けばとても良い作品だと思うけど、ただ映画にしただけでなんの工夫も、新たなテイストも無く退屈で退屈で、何度も途中退出したくなった。 まあ、そもそもダンス・シーンのないミュージカル作品は嫌いなんだけどね。またブロードウェイ・ミュージカルは大好きで何度も本場で観ているから、ただ映像化するくらいであれば、生の舞台の方が圧倒的に素晴らしい。映画化するのであれば、映画でしかできない何かが欲しい。 とにかく退屈、3時間近くもこんなものに付き合うのは本当に時間の無駄。 栗1つ。新宿ピカデリー スクリーン1にて。 |
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2012 12,01 22:50 |
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待ちに待った「007 スカイフォール」を初日に観てきた。007映画化50周年記念のこの作品は、ファンなら思わずニンマリとしてしまうシーンが散りばめられている。ああ、話したいけど、これから観る方のために我慢するよー。 今回もオープニングからド迫力アクションが展開。これは、ちょっと「ボーン・アイデンティティー」シリーズにかなり影響されてか、最近この手のアクション映画が、CGではなく昔ながらのスタントが復活して嬉しい限りだ。このオープニング・シーンだけで、もう手に汗握る大迫力。そして、主題歌は、アデル。こちらも今旬なシンガーをおさえているね。 監督は、「アメリカン・ビューティー」のサム・メンデスだけに、ユーモアの中にやっぱり残虐性と重たい人間ドラマが横たわる。ダニエル・クレイグになってから、結構重々しい雰囲気はあるよね。何やら秘めた冷たい007の過去がだんだんと明かされて行く感じ。 悪役は、性格俳優のハビエル・バルデム。「羊たちの沈黙」のアンソニー・ホプキンスばりに怖い。一方、ボンド・ガールは活躍が少なかったねえ。あまり魅力的でも無かったし。実は今回のボンド・ガールは、ジュディ・デンチじゃないかしら。ガールじゃないけど・・・。 まあクレイグのボンド一作目の「カジノ・ロワイヤル」を超えるほどではないが、、文句なく楽しめる作品だ。早く次の作品を観たいな。もちろん、ダニエル・クレイグで。惚れてしまうほどかっこいい。スーツは、前作から変わらず今回もトム・フォード、ボンドは、やっぱりスーツだよね。
栗4つ。新宿ピカデリーにて。 現在、なりきりボンドキャンペーンが展開中です。僕もやってみた。(笑) http://narikiri-bond-pia.jp/ |
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2012 10,05 14:18 |
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キャット・スティーヴンスの歌が全編に散りばめられているが、これも70年代ぽいなあ。「If you want to sing out, sing out」の詞がいいんだよねえ。 狂言自殺を続けて母親を困らせつづける19歳の少年ともうすぐ80歳になる人生を謳歌している老婆とのラブ・ロマンス。友情というならまだ分かるけど、愛情に変わって行く後半は、やっぱりちょっとついて行けないなあ。 天真爛漫、自由奔放でやりたい放題で楽しそうな老婆の過去が明かされる夕暮れの場面の美しさが胸に突き刺さる。ここで終わっていたら栗5つだったんだけどなあ。 残酷一辺倒で終わるかなと思ったら、ラストにはちょっぴり生きる希望が・・・。 ぶっとんだすごい映画だけど、生きることの意味を考えさせられる。70年代のアメリカ映画って本当にすごかったなあ。 栗4つ。新文芸坐にて。
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