2007 09,23 21:54 |
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妻を探す男と夫を探す女。二人の主人公は劇中交わらないが、変わり行く長江の風景の中で交差する。何気ない会話と消えゆく運命の景観の中で淡々と続く物語は、心に染み込んでくる。 それぞれの主人公が求めた人と出合うシーンでの台詞を抑えた演出が秀逸。 音楽も素晴らしく、挿入される歌のメロディーと歌詞がなんとも言えぬノスタルジーを醸し出す。 心に染み入る今年忘れられぬ1本。 栗4つ。 日比谷シャンテシネ3にて。
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2007 09,18 20:02 |
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BREACH これは、面白かったなあ。日本で公開されるんだろうか。お薦め。 「父親たちの星条旗」のライアン・フィリップ主演の実話をもとにしたサスペンス。FBIの捜査官候補の若者がアメリカ最大のスパイに挑む。緊迫感あり、人間としての葛藤があり、久しぶりに良質の映画になっている。 競演は、クリス・クーパー。演技合戦も見もの。 Mr. Bean大好きなんだけど、今回の映画は、消化不良気味。展開もギャグも古臭い。昔のスラップスティック・コメディを見ているよう。ベルギーとドイツでテレビ版のBeanの新作が放映されていたが、やっぱりテレビ版の方が面白い。 それでも、今回、パリでTGVに乗る前の駅のレストランのシーンでは笑ってしまった。Jean Rochefortがギャルソン役で出ていた。 ひ、ひどい映画だ。リュック・ベッソンってもうどうかしてしまったのか。 子供でも退屈しそうなありきたりの冒険物語。無料なら観てもいいが、時間を無駄にする。 ミア・ファローが出ていたり、声の出演でマドンナやデビッド・ボウイが参加しており、一応豪華。 何がしたかったんだろう? 何が描きたかったんだろう? |
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2007 08,18 23:05 |
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プロローグの「宗悦殺し」は、 あんな感じでもしょうがないかなあと思うけど、肝心の恐怖のクライマックス「豊志賀の死」と「お久殺し」が全くダメだった。「豊志賀の死」は、かなり端 折って脚色されており拍子抜けだった。落語で聴くこのシーンは、全身に鳥肌が立ち、血流が逆流して脳味噌を刺激するのに、本当にがっかり。 セットも照明もちゃちいので、累ヶ淵の沼も何の緊張感も恐怖なく、水の中から志村けんや加藤茶が出てきたらどうしようと冷や冷やした。まあ、いかりや長介とかハナ肇が出てきたら賞賛していたところだが・・・。 深見新五郎のパートがなくお園が生きているという設定は、映画的にありだと思うが、後半の展開はめちゃくちゃ。なんか品の無いチャンバラ映画だった。脚本がひどいねえ。脚本がひどいからどうやってもひどい映画にしかならない。 音楽のセンスも最低。全然映像とあっていない。エンディングが浜崎あゆみ、「真景累ヶ淵」の後に浜崎あゆみ? 何を考えているんだろう? も、もしかして、観客を笑い殺す作戦? あまりにお粗末で、今年のワースト映画は必至か。 栗1つ。 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン11にて。 |
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2007 08,16 23:12 |
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前半、田舎の家でのおばあちゃんとのバトルは抱腹絶倒、下水を流れて屋根の上から初めて見るパリの街の美しいこと・・・。 屋根裏、下水道、床下などねずみ視点のカメラの動きがとても楽しい。バイクとネズミのカーチェイスも迫力たっぷり。 何よりも圧巻は、料理の手順。実際に取材して作られた料理のシーンは、本当に楽しいし、料理もとっても美味しそう。ディテールの凝り方には感服。 レミーも可愛い。いじわる料理評論家の声がピーター・オトゥール、涙ちょちょぎれたよ。 音楽もセンスがいい。栗4つ。 ユナイテッドシネマ豊洲、スクリーン7にて。 |
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2007 08,10 23:24 |
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この作品、チャンドラーの有名なフィリップ・マーロウものだけど、そこはアルトマン、ハードボイルドを期待するとこの緩く不思議なユーモアの作品に良い意味で裏切られる。 ボサボサ頭でヘビースモーカーのマーロウは、うだつのあがらぬ感じだ。 それにしてもまずオープニングからその洗練された音楽でメロメロ。この音楽センスは、70年代の映画史上最高と言っても過言でないほどしびれる。全編音楽にしびれっぱなし。 アルトマン得意のガラスを使った印象的なシーン、夜の海の波のシーンなど映像もセンス抜群で、猫に翻弄されるダサダサ主人公がいつの間にか巻き込まれる事件に自然と夢中になってしまう。 猫、犬の使い方がびっくりするほど上手く、動物アカデミー賞があったらあげたいくらいだ。 抜群の音楽と映像センスに眩いばかり魅せられて、もうくらくら。 栗4つ。 渋谷ユーロスペース2にて。
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2007 08,03 23:27 |
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シェリー・デュバル、シシー・スペイシク、有名な映画スターなのに絶対に恋に落ちたくない女優陣が魅せる不思議な映画。もうなんて表現していいのか分からん。ガラスを爪でひっかく時のあの嫌な心持ちの感じ・・・、それが映像と音楽になったよう。 シシーは、ある意味「キャリー」より怖いし、シェリーもそれに輪をかけて不気味。 それにしてもアルトマンって変な女優が好きだよなあ。 いや全く何と表現していいのか本当に分からん映画だ。でも見入ってしまう。アルトマン、いろんな映画を作っていたんだなあ。 栗4つ。 渋谷ユーロスペース2にて。
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2007 07,30 11:47 |
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2007 07,29 23:48 |
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野戦病院に次々に運ばれてくる負傷兵、そして手術、延々続くその繰り 返しの合間のドタバタ・コメディーだが、ギャグが全然面白くない。構図は、なるほどふむふとうなってしまうシーンがいくつかあったが、ギャグはつまらな かった。アメリカ人が好きそうなエロ・バカネタばかりで辟易。 戦争とういう極限の環境下での狂気とユーモア、まあやりたいことは分かるけど、全然面白くなかったなあ。なんか舞台も全然戦争という緊迫感も緊張感も無いし・・・。 個人的には、アルトマンの映画で一番嫌い。 栗一つ。渋谷・ユーロスペース2にて。 隣 の席に座っていた女が、椅子を揺らして大声ではしゃぎながら笑っていたのですごく不愉快だった。手術のシーンでは、「いやーん気持ち悪い」なんて言ってい たが、この女の方が遙かに不気味で気持ち悪かった。ものすごく体を揺らしながら不気味に笑うので、「エクソシスト」で悪魔に取り憑かれたさまを間近で見て いるようだった。 |
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2007 07,28 23:49 |
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遠藤周作の原作は、学生の頃に読んだが、映画は未見だった。小説にある冒頭の現代の勝呂医師のエピソードの部分は、まるまる無かったが、かえって映画の雰囲気に統一感が出ている。
それ以外は、原作にかなり忠実で台詞もほぼ同じだ。登場人物の心象風景のようにうねる海、舞台のセットのように簡素な空間での光と闇の陰影や独特の構図は映画的技法がこれでもかと美しく冷たく昇華され圧倒的だ。 戦時中、九州帝国大学医学部で行われたアメリカ人捕虜の生体実験。戦争という極限下ということもあれど、人間の尊厳を問う重いテーマだ。 個人的には、奥田瑛二演ずる主人公勝呂より、渡辺謙演じる戸田に感情移入してしまう。善悪や理性の問題より、その時代の生き方というのを考えてしまう。 「人を殺すということに無感動になってしまう」という戸田の台詞が強烈だ。この残酷な行為が何とも人間的だから胸に深く何かが突き刺さる。 栗5つ。スクリーンで観られて良かった。 銀座シネパトス1にて。 |
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2007 07,27 23:50 |
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アルトマンの群像劇の 最高峰と言っても過言でない。たった数日間に、多くの登場人物が交差する。すごいのは、登場人物の過去や現在そして未来に対して何の説明もないのだが、そ れぞれ少ない出演シーンの台詞や仕草でその人物の過去や性格、抱えている悩みや野望、悲しみを観客にそれぞれ想像させるところだ。とにかく役者の一挙手一 投足に人生が現れている。カレン・ブラックが花を受け取らないところとか、病室でマニキュアを塗るシーンとかねえ・・・。 キース・キャラダインとカレン・ブラックが提供し自ら歌う素晴らしい歌曲の他たくさんのカントリー・ミュージックの美しい名曲にあふれ、その歌詞がまた映画の台詞のようだ。 主人公のいないこの映画、地球のある街の姿を切り取り、実は誰もが主人公なのだ。 こういう脚本を書き上げ、映画にしあげるその達成感とやらはものすごいものだろう。人間の良い面も嫌な面も強烈に凝縮され、人生の頂点と没落をステージに投影する様に、遺作「今宵、フィッツジェラルド劇場で」が重なる。 物語が終わり、クレジットが流れ、真っ暗なスクリーンに音楽だけがこだまする。何とも表現できない思いに言葉もなく暫く席を立てなかった。 渋谷・ユーロスペース2にて。栗5つ。
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