2015 02,19 22:49 |
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六本木のTOHOシネマズで「チャイナタウン」を観てきた。過去の名作を25本選び上映する午前十時の映画祭で、大好きなこの作品に映画館の大きなスクリーンで再会することができた。ロマン・ポランスキー監督、ジャック・ニコルソン主演、共演にフェイ・ダナウェイ、ジョン・ヒューストン。個人的には、「死刑執行人もまた死す」、「第三の男」、「ロング・グッドバイ」などと並んでサスペンス映画の最高峰の一つだなあ。 主人公は元刑事の探偵、最初は単なる浮気調査のはずだが、二転三転していく物語、次々に現れる一癖も二癖もある登場人物、だんだんと巨大な悪の組織に巻き込まれながら、その中に悲しい人生を背負った人間模様のドラマが展開される。1930年代のロサンジェルスを再現した雰囲気、ジェリー・ゴールドスミスの美しいながらも不安を掻き立てる音楽、憎いまでのカメラショットやカメラワークと映像と音楽に酔いしれながら映画に引き込まれていく。。 しかし、この映画撮影中は、出演者が罵り合いながら制作されたとの逸話がある。プロデューサーが連れてきたフェイ・ダナウェイが気に入らない監督、脚本のラストシーンが気に入らない監督、映画が出来上がってから変更された音楽などなど、とても協力しあって作られた映画ではなかったそうだが、完成品を観た時に関わった関係者があまりの素晴らしい出来にポランスキーに何も言えなくなってしまったそうだ。ドキュメンタリー映画にもなった名プロデューサー、ロバート・エヴァンスの手腕もあったのだろう。また、ロバート・タウンのこの脚本は、ハリウッド映画史上最高とまで讃えられているそうだ。ただ、ポランスキーが書き換えさせたあの結末だからこそ、この映画が胸に突き刺さり、見終わった後、何とも言えない余韻に浸ることができるのだと思う。出演者の演技も素晴らしく、特に名監督しても名声を欲しいままにしているジョン・ヒューストンの怪演は、本当に怖い。栗5つ。
そして、今年も4月から第三回新午前十時の映画祭が開催されます。今回も「風と共に去りぬ」、「カサブランカ」や「ローマの休日」などの王道とともに、映画ファンを唸らされる渋いセレクションが含まれている。特に最近ではスクリーンでの上映がほとんどない「アフリカの女王」や「素晴らしき哉、人生!」の2本に心躍らせるなあ。これは絶対にスクリーンで観たい。また、昨年亡くなられた高倉健主演作品も「駅STATION」と「新幹線大爆破」の2本、そして今だからこそ観たい黒澤明監督のヒューマンドラマの傑作「赤ひげ」も嬉しいセレクションだ。 上映作品リストは、こちら。4月に新しくオープンするTOHOシネマズ新宿も上映劇場に含まれている。 |
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2014 12,21 17:25 |
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虚栄と自尊のために作られた虚像をあたかも実存のように嘘で塗り固めて生きている登場人物、それをさらに確たるものにするために、周りのお馬鹿な群衆をマスコミやネットで操る。ミステリーの形を借りて、人間の本性とエゴをあぶり出す快作だ。 架空の完璧な人間を作ろうする登場人物、それに煽動される大衆を、観客は「馬鹿なやつ」と嘲りながら見ているうちに、実は、フィンチャーに「それって、君たちそのものだよね」と揶揄されているようだった。 最初のバーのシーンに全てがあると言っていい。主人公と妹が人生ゲームをやっている。誰もが自ら作った人格を実存させるための嘘や振る舞いで生きている。バーカウンターの滑るグラス、人間をデコレーションしているかのような粉砂糖が舞い上がる場面で唇を拭ってのキスシーンなど、今作もフィンチャーらしい憎い映像表現が面白い。 いろんな伏線が敷かれていて、あちこちに観客をニンマリとさせる仕掛けがある。今年のお正月映画は、これだな。 TOHOシネマズ日本橋 スクリーン5にて。栗4つ。 |
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2014 11,30 20:54 |
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予告が終わり、スクリーンが横いっぱいに広がり、タイトルが映し出されただけでジーンときた。この映画はこれまでに何度も何度も観ている。映画館で、名画座で、テレビで、ビデオで・・・。でも、ここまで大きなスクリーンで観たのは初めてで、あらためて映画館で観る映画の醍醐味を感じた。 映画は、武田鉄矢と桃井かおりが笑いを振りまきながら、だんだんと高倉健演じる主人公の過去が明らかになっていく。もてないダメ男の武田と内気でか弱い桃井が高倉と旅をしている間にともに強く大人になっていく脚本も秀逸だ。なんと言っても観ていてこんなに楽しい映画はないし、そして展開も結末も分かっているのに、何度観ても最後には涙が頬を伝う。この映画を映画館で観ることは、昔の友人に再会するようなもので、あの頃に戻って夢中になって観てしまう。向こうは変わらず同じなのに、不思議と感じる思いは観る度に違っている。こちら側が年を重ねているためだろう。 終映後、場内から拍手がおこった。あちこちですすり泣く声も聞こえた。本当にいい映画。日本映画の誇りの一つだと思う。 いつでも会う度に優しく迎えてくれ、最後に流れる涙で心を洗ってくれるこの映画に、これからも映画館で会えることを願ってやまない。 今回の新・午前10時の映画際での「幸福の黄色いハンカチ」の上映は、12月12日まで。TOHOシネマズ六本木ヒルズのスクリーン7での上映は、今のところ12月3日までだ。4日以降はちょっと小さめのスクリーンに移る。なお、さらに小さいスクリーンにはなるが、午前10時以外にも上映があるようだ。 また東京池袋の新文芸坐では、来年2015年の1月18日より高倉健の追悼特集が予定されている。名画座の中ではこれまた破格の大きさのスクリーンを持つ新文芸坐、こちらでも健さんに会うことができるのだ。 やはり、映画館で観ると感動も一入だ。
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2014 11,22 21:01 |
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しかし、物語は予定調和だ。お決まりの展開、お決まりの裏切り、そしてラストもなんとも陳腐。人間のエゴがぶつかるあたりは魅せるが、どうもやっぱり宇宙を舞台にした家族愛なんでしょってのが観ていてひいてしまう。 まあ、映像はとてもいいので、どうせ観るなら映画館のなるべく大きなスクリーンで観た方がいいだろう。 「2001年宇宙の旅」の世界観にはおよぶべくもない。 あふれんばかりの映像の洪水の中に、家族の形や人間の宗教観を描きこんだテレンス・マリックの「ツリー・オブ・ライフ」的なものに、がんばって近づきたかったのかなあ。見終わった後、なんの余韻もない。 SFの形を借りた家族愛の映画。栗3つ。 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン10にて。 |
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2014 08,16 22:07 |
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これは、映画というより文学。視覚で見せながらも想像力の冒険のような楽しさがある。スクリーンのあちらこちらに散りばめられた謎解きのヒント探しも面白い。観た人なりのそれぞれのストーリー、結末の解釈があるだろう。終映後、あちこちから「分かんない」、「途中で寝た」などの声が聞こえてきた。 僕は、観ている間、昔懐かしい風情に酔っていた。突然、突きつけられた予想外のラストに、むしろ映画が終わってから脳味噌の中でいろんなものが湧き出してぐるぐると駆け巡った。 良質の文学作品を読み終えたような気分。栗4つ。 TOHOシネマズ シャンテ スクリーン1にて。 ただ最近、映画の宣伝とそれによる観客の期待には、ものすごくギャップを感じる。観客を映画館に呼びたい気持ちは分かるけど、映画の姿を正しく伝えてないねえ。 |
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2014 06,08 19:28 |
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それでも現代的なのは、主人公がパソコンを習って新たなスキルを身につけようと努力はするところ。また舞台の戯曲だった『欲望という名の電車』(のちにヴィヴィアン・リーで映画化)に比べると、細かい登場人物が多く、それらが皆自分勝手なところにアレンの現代社会への冷めた目線がある。 一見狂人のような主人公のジャスミンだが、彼女の自尊と虚栄は、大げさのように見えて、人間の普遍的な本性をこれでもかと見せつけられているようで痛々しい。ケイト・ブランシェットは、上流階級時代の役と落ちぶれてもまだ往時の自分を捨てきれない女を演じていて圧巻だ。ただ、どうしても映画『欲望という名の電車』と比較してしまうと、鬼気迫る精神の破壊が強烈だったヴィヴィアン・リーのすごさが思い起こされてしまう。 結末も『欲望という名の電車』とほぼ同じだけど、絶望的でかなり後味の悪い旧作よりは、まだ潔い清涼感がある。 自尊、虚栄、嫉妬、これでもかとぶつかり合う中で、真実の愛を模索し、妥協しながら生きている市井の人々が時に切なく、時に楽しく、人生の光と影が凝縮した佳作である。 栗4つ。品川プリンスシネマ スクリーン4にて。 しかし、こういう映画を見せられると、現代においても階級によって、恋愛対象、住む場所、食べる物、買えるものもこんなにも違うのかと改めて認識させられるなあ。 |
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2014 05,11 11:13 |
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前シリーズのサム・ライミ版が面白かったので、今シリーズもやはり観てしまう。ホラー映画が得意なサム版より、新しい方がダークで重いね。 スパイダーマンが好きなのは、この映画の悪役。もともとは善人なのに、スパイダーマンへの愛があるのに、誤解によってそれが憎しみに変わる点。シェイクスピアの悲劇みたいなところが好き。愛が憎しみに変わる恐ろしさ、人間が描かれているよねえ。(笑) ただ、毎回思うのは、並行して描かれるエピソードが多過ぎて、全体的に散漫な印象がぬぐえない。ピーターの両親失踪の謎、電気マンのエピソード、ハリー・オズボーンの物語、ピーターとグウェンの恋とまあ、盛り込み過ぎ。 びっくりしたのは、タイムズ・スクエアでのアクションは、ロケではなくセットだということ。バックはCGなんだろうけど赤い階段とか、ああ、ここ行った行ったと観光気分に浸れる。 娯楽アクション大作なんだから、もっとシンプルでもいいなと思った。 栗3つ。TOHOシネマズ日本橋 スクリーン8にて。 オープンして間もないTOHOシネマズ日本橋。この地区には映画館が無かったが、TOHOの本拠地有楽町に至近なだけにお客さんの取り合いにならないのかな? プレミア・ボックスシートで鑑賞。革張りで左右のスペースが広く、隣と仕切りもあり落ち着いて鑑賞できる。新宿ピカデリーやユナイテッドシネマ豊洲のプレミアシートほどの豪華さはないが、値段も手頃でいい感じ。ただカップルで来ると会話しづらい。一人で映画鑑賞には最適。全席このシートになれば、無駄話する客が減って静かに映画鑑賞できるのにな。 |
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2014 05,05 23:37 |
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ネタバレ有り。
同時上映の短編「ミッキーのミニー救出大作戦」は、素晴らしい。モノクロのノスタルジーなアニメの世界から一転、スクリーンの外と中を縦横無尽に駆け巡り、はちゃめちゃで可笑しくて楽しい。3Dの機能を上手に活かし、映画の世界と外の世界の行き来がとってもいい。スクリーンを逆さにしたり、スクリーンから飛び出すとカラーになったりと、これは絶対に3Dで見るべき。ディズニーランドのアトラクションとしても十分成り立つクオリティー高い作品だ。 でも、なんかものたりない。そもそCGアニメは、ディズニーぽっくない。「白雪姫」や「眠れる森の美女」の柔らかで神秘的で、ちょっとどこかおどろおどろしくもあるあのテイストがない。デジタルな動きはカクカクしていて馴染めないなあ。 また脚本もいまいち。最初に子供時代のエピソードを見せられるので、何故エルサがアナを避けるのか、それが優しさ故であるというのを観客は始めから知っている。エルサが冷たい女で何か影がある方が物語的には面白いと思う。邪悪な部分が少ない。また、最後にアナがあのまま死んでしまって、氷の女王の心が溶けるという方が好きな展開だ。最近のアメリカ映画は、残酷な展開が無く、余韻が残らないなあ。まあ、ハッピーエンドの方が大ヒットするし、そもそも続編ありきなんだろうね。 唯一、雪だるまが夏を想って歌うシーンは、アメリカ映画らしいバカバカしさがあって好きだ。 栗3つ。全体的には優し過ぎて物足りない。 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン10 3D英語字幕版にて。 |
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2014 02,02 15:54 |
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ディカプリオは、いろんな映画で様々な役に挑戦していて、がんばっているなあ感はとってもあるんだけど、どの映画を見ても同じなんだよねえ。 前半はマシュー・マコノヒー、後半は気味が悪いほど憎たらしいジョナ・ヒルの方が存在感があり、同時にスクリーンに出るとディカプリオは霞むなあ。 前半の成り上がるまでの過程はテンポ良く見せるが、後半はダレるなあ。 エンド・クレジットのバックに流れるのが、なんとロビー・ロバートソンの曲。これが、素晴らしいの、かっこいいの。残念なことにサントラに入っていないのよ。映画のことは忘れちゃいそうだけど、この曲はYouTubeでヘビーローテション決定! 「グッドフェローズ」をもう一度に、ならなかったね。栗3つ。 ただ、マシュー・マコノヒーとジョナ・ヒルは見る価値あり。 新宿ピカデリー スクリーン1にて。 |
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2013 12,14 22:13 |
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<良かった点> <残念だった点> 迫力ある映画なので、観るならなるべくスクリーンが大きく音響施設の整った映画館での鑑賞をおすすめする。
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