2008 08,03 23:33 |
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六本木から京橋に移動して、夕方は、フィルムセンターへ。
これは、オッフェンバックの歌劇を1951年に映画化したものだ。トマス・ビーチャム指揮、ロイヤル・フィルの演奏に後から映像を付けたもの。台詞は全て原曲のオペラになっており、役者の演技は、サイレント時代の大げさな感じがしてしまう。 幻想的な色使いとシュールなセットの前で繰り広げられるバレエ・シーンは綺麗だが、サイレント映画に着色したような古めかしさは否めない。 それでも「娼婦ジュリエッタ」のシーンで歌われる有名な「ホフマンの舟歌」では、美しい旋律と色彩豊かな映像にうっとりだ。 背景が紙芝居の絵っぽいけど、オペラ、バレエ、音楽、映像を融合したなかなかに幻想的な一品だ。 世界観は素晴らしいのだが、やはり古めかしいなあ。 栗3つ。 京橋・近代フィルムセンターにて。 |
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2008 08,03 20:35 |
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ダークなテイストがたまらない。先日の「ハルク」と違い、これでもかのアクションシーンの連続でなく、よく練られたドラマがある。物語は、二転三転し、そしてまたかなり切なく、そして後味はあまりよくない。単純なアクション映画を期待していくと確実に裏切られる。
よくもここまで重く、また結構グロテスクでダークな映画が米国でこの夏の最大のヒットになったものだ。ヒース・レジャーへの追悼の意味もあるのかな。 そ のヒース・レジャーだが、過去にジャック・ニコルソンが演じて強烈なイメージを残したジョーカーに挑戦した。その結果だが、もうぶったまげるほどすごい。 完全に主役のベールを食っており、ヒースの独壇場の映画だ。しかし、あのメイキャップ・・・。これが遺作となったのは、あまりに残念だ。 物語は、かなり重い。スーパーマンのような異星人でなく、普通の人間であるバットマンは、肉体の老いなどから永遠にヒーローではいられない、その辺の苦悩から、街の新たなヒーローを作ろうとするのだが・・・。 何か事件が起きる度に、簡単に心変わりする市井の人々を揶揄しながらも、それこそが人間なのだというその普遍的な行動がまた切ない。そして、その人間の弱さをジョーカーが突いて悪事に勤しむというその構造がすごい。 同じ人間の中にある正義と弱さを巧みに利用した戦いがすごい。単なるアクション映画でなく、重厚なドラマでもある。 ド迫力のアクションシーンもあり、この夏大スクリーンでぜひ。必見! 栗4つ。 TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン7にて。
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2008 08,01 21:40 |
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2008 07,27 23:47 |
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当時のフィルムと多くの人々のインタビューからなるドキュメンタリー。インタビューされる人が多すぎ、また昔の映像とそのインタビューが延々繰り返され、ドキュメンタリーの作りとしては退屈。
し かし、反共・冷戦の時代を迎えるとは言え、ナチの残党までも庇護して利用する米国に、一番背筋がゾッとした。また、軍事政権下のボリビアにも守られ、戦後 も人生を謳歌するバルビーも驚きだ。家族に対しては優しい父親であり夫であり、一方でビジネスマンとして成功し、またその一方で残虐に牙をむく。悲しいか なそれが何とも人間的である。 最後の裁判の時には、もうただの老人のようであった。彼を弁護する弁護士の論理は、一理あるがどうも胡散臭い。売名行為じゃないのか・・・。 バルビーを擁護するつもりはさらさらないが、群集や国家ぐるみでやったことに対して、誰かを人身御供にして、それでおしまいというのが、戦後処理のような気がしてならない。 もっとスパイとして利用したアメリカの背後にあったものを追求してほしかった。 栗3つ。銀座テアトルシネマにて。 |
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2008 07,27 21:48 |
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1931年に作られたドイツ映画。素晴らしい音楽と大げさだけどなんともロマンチックなラブストーリーだ。ロシア皇帝に恋をしてしまうウィーンの手袋屋の娘が皇帝の別荘へ馬車で行くまでのシーンは、モノクロながら絢爛豪華で音楽と踊りがとても楽しい。
有名なウィーン会議の裏で繰り広げられるドタバタなラブコメみたいだけど、こんな映画の創世期から考え付くことはもうやりつくされているんだなあ。最近のラブコメなんかより格段に楽しく、そしてなんともロマンチックで、そしてセンチメンタルだ。 主 役の女優のちょっとサイレント映画のような仰々しいオーバーアクションが玉に瑕だが、皇帝が「また会おう」と馬上に消えていく場面で、「また」なんて無い のだと気づき始める女心の刹那さを表現するラストシーンは、鳥肌もの。その際に流れる「唯一度だけ」の詞とメロディーがあいまって、全編楽しく幸せの絶頂 だった映画が一気にセンチメンタルな終焉を迎える。 なんという余韻、なんという素晴らしさ。ああ、これこそが映画を観る至福の喜びなんだよなあ。 京橋・近代フィルムセンターにて。栗4つ。
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2008 07,26 21:51 |
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短い作品ながら童心にかえり楽しくなった。本当に生きているかのような赤い風船は、今だったら絶対CGで作るんだろうねえ。子供の自然の演技も、街行く人の迷惑そうな感じもとてもよかった。
子供社会の妬みや憧憬が、ちょっと切なくこころにしみた。たまんなくロマンチック。今の映画が忘れてしまった多くのものが凝縮されている。 栗4つ。シネスイッチ銀座にて。 同時上映のこれまた懐かしい「白い馬」もなかなかだった。馬の演技、疾走する馬の撮影、いったいどうやって撮影したの?とただただ驚くばかり。
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2008 07,25 21:52 |
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自然が前触れもなく突然人間に牙をむく。面白かったねえ、ヒッチコックの「鳥」は・・・。怖かったし、ハラハラドキドキしたし、人間模様がよく描けていたし、やっぱしヒッチコックはすごいよねえ。
あ、なんだっけ、シャマラン君? この人は、「シックスセンス」が奇跡だったのねえ。才能全部「シックスセンス」で使い果たしちゃったのねえ。残念ねえ、ヒッチコックと違って、たった一本しか面白い映画作れなかったのねえ。残念だねえ、シャマラン君。 「ハプニング」、一言で表現すると「つまらん映画」だ。観てしまった観客こそ、一番のハプニング。 栗1つ。ユナイテッドシネマ豊洲スクリーン10にて。 あ、マーク・ウォルバーグはいい俳優だ。 |
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2008 07,21 21:53 |
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染みた。素晴らしい。
登場人物は、皆明るく楽しいのだが、どこかで孤独と寂しさを感じている。 正体不明で自己のアイデンティティーと友達を探すチェブラーシカ。ミカン箱に紛れ、間違って果物屋に運ばれ、動物園に連れて行かれるが、正体不明だからと入園を断られる。そんなチェブに孤独な動物園のワニが「友達募集」の貼り紙を・・・。 自 己と友達を探す人形アニメ。チェブの可愛らしさは言わずもがなだが、いじわる婆さんもいい味を出している。全編を通して貫かれているのは、友達を探す姿 だ。正体不明だから友達を探す、孤独だから友達を探す、人に意地悪をすることで友達を探す、それぞれの登場人物はユーモラスだが、心の底に孤独と寂寥感が あるのが切ない。 挿入歌の「誕生日の歌」もとても心に染みる。 栗4つ。また観たい。何度でも観たい。 シネマ・イクスピアリ スクリーン2にて。 映画館のロビーにいたチェブラーシカ。
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2008 07,20 15:02 |
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2008 07,13 22:20 |
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久しぶりに心に染みる邦画を観た。ただ、全編通して重く暗く切ない。
死にゆく運命の死刑囚を日々監視する刑務官。いつかは自分たちの手で刑を執行しなければならない囚人と、刑務官はなるべく人間的つながり持たないようにする。されど死刑囚は、この世で最後の人間的なつながりを刑務官にすがろうとする。 新人刑務官は、明るく仕事に前向きだが、ベテラン刑務官になるほど口数が少なく、無感情だ。死刑囚と刑務官との日常がまず興味深い。 小林薫の起用は、他に考えられないほど素晴らしい。小林は、感情はおろか人間性さえも殺してしまった刑務官を最高の演技で見せる。 この映画では、小林演じる主人公が三度人を抱きしめるシーンがある。一つは、まさに死にゆく死刑囚、それから再婚相手の女、そして再婚相手の連れ子。小林薫のこの三様の抱きしめ方が感動的だ。 新聞の評論に、「死刑制度への立場を明確にしていない」とあったが、そんなのこの映画の真髄ではない。人間が死ぬ一方で、とある家族が再生していく、なんとも悲しく拮抗する相容れない主人公の感情に目頭が熱くなる。 ラストシーン、人間性を取り戻す小林薫の笑顔が忘れられない。 栗4つ。 有楽町スバル座にて。 |
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