2010 11,26 23:51 |
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2010 11,20 21:33 |
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この映画を作った全ての人を誇りに思う。そして、かつて日本映画界にこんなにもすごい映画があったんだと、その底力には感服してしまう。
まさに黒澤映画の集大成、魂を揺さぶるヒューマニズムの傑作中の傑作だ。 三船の存在感は、圧倒的。全てが素晴らしく、彼以外の配役は考えられないほど。物語は、新入りの医者役の加山雄三の視点で展開していくが、群像劇さながら、多くの登場人物の生き様が織り込まれている。どれも悲惨で、切なく、絶望的ながら、その中にささやかな幸せと生きる希望が垣間見える。 そして、それぞれが強烈な印象を残す俳優陣の演技と演技とぶつかりあいに驚愕する。 過酷の環境の中、それでも生きている人間がいる。「どん底」がとことん希望がないなか、この「赤ひげ」では、人間の優しさと強さの連鎖が他の人々への支えになっている。 途中、何度も鳥肌が立ち、涙腺が切れそうになる。 最初反発している若者が成長していく様が描かれるが、その真っ当な物語展開はあまりに直球だが、心の底からの感動を与えてくれる。 映画を観て、魂が揺さぶられる、そんな数少ない体験をさせてくれる映画史上に残る傑作だ。 栗5つ。なにもかもが完璧。栗10個くらいあげたい。 京橋・フィルムセンターにて。
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2010 11,14 21:31 |
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こちらは、ゴーリキの戯曲『どん底』を黒澤明と小国英雄が脚色した傑作。
タイトル通り、まさに人生の底辺、どん底にある江戸の崖下の長屋が舞台。およそ人が住むところと思えぬほどみすぼらしく汚い長屋からカメラはほとんど出ない。もともとが戯曲だから当たり前だが、映画というよりは演劇的色彩が強く、実際40日間のリハーサルを経て撮影されている。 夢も希望もなく、救いようもない絶望的な毎日の中で、それでもなんとか生き抜く市井の人々の描写がものすごい。まるで本当に登場人物そのものになりきっていて、切なくもあり、悲しくもある。されど、悲惨な生活の中でも、博打や歌や踊りに明け暮れる時の人々の表情の明るさに、生きるとは何だろうと考えさせられる。 ここでも山田五十鈴の悪女ぶりは圧巻で、ぶったまげる。 最後にはきっと何か救いがあるのではという観客の想いは、裏切られ、絶望的な最後が待っている。 ラストのどんちゃん騒ぎの後の最高の台詞が印象深い。 絶望的でどん底の人生、それでも生きている人間。生きるとは何ぞやと答の出ぬ問いかけに、映画的表現で応じたものすごい傑作。栗5つ。 京橋・フィルムセンターにて。
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2010 11,14 21:29 |
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「生誕百年 映画監督 黒澤明」が京橋のフィルムセンターで始まった。黒澤の作品は、全部スクリーンで観ている。名画座やリバイバルがほとんだだけど、全作ビデオでなく映画館で観ている。
そして、こういう特集上映の時は、やっぱりかかさず観にいってしまう。映画は、テレビの画面ではやっぱり物足りない。 この作品は、シェイクスピアの『マクベス』を戦国時代に置き換えたもの。脚本には、 小国英雄、橋本忍、菊島隆三、黒澤明と日本映画の神様的存在の名前が連なる。 三船敏郎の存在感は言わずもがなだが、圧巻は、山田五十鈴だ。彼女の動きには、能の技法が取り入れられ、暗闇から現れる不気味な演出は、背筋がぞっとするほど強烈な印象を残す。 森を疾走する馬に乗った武士、不気味なもののけ、効果的に使われた靄や霧と映像表現にもハッとさせられる。 もののけの予言に振り回されながらも、忠義や信頼をかなぐり捨て、自分の欲望と野望のままに滅び行く人間の悲しい生き様が凄まじい。天下を取ろうとする武将の影で、不気味に男を操る女の恐ろしさも強烈だ。 そして語り草にもなっている有名なラストの弓矢のシーンの迫力たるや、キューブリックの「シャイニング」も真っ青になる。 栗5つ。久しぶりに観てもやっぱりすごい。
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2010 10,22 23:13 |
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馬鹿だねえ。馬鹿すぎる。
スタローンが脚本書いているから、台詞のボキャブラリーが少ないよ。こりゃ、多くの日本人が字幕無しで映画を楽しめるんじゃないの? スタローンが脚本書いているから、台詞がぞっとするほどおぞましいよ。恥ずかしくて聴いている方が赤面しちゃうよ。なんなんだろ、ミッキー・ロークの涙の演技。台詞が阿呆すぎて、それを聴いてまた涙ぐむスタローンが輪をかけて間抜けで、涙のシーンも失笑してしまう。 そしてお決まりのこれでもかの、大爆発と人間殺し。 爆発ドカーン、人間の腕がボーン、爆発ドカーン、人間の頭がズボボーン。吹っ飛ぶよー。血が飛ぶよー。 建物が壊れるよー。 馬鹿、馬鹿、馬鹿のオンパレード。でも、ここまで馬鹿だと見なきゃ損かも。 栗一つ。ユナイテッドシネマ豊洲スクリーン8にて。 馬鹿すぎて、脱力。ここまで馬鹿に徹することができるスタローンって、ある意味すごいかも。 まあ、ジェイソン・ステイサムはかっこいいわ。 何が怖いって、続編があるっぽい終わり方が怖いわー。やめてー。 |
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2010 10,15 23:54 |
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トム・クルーズとキャメロン・ディアス共演のアクション・コメディ大作。もはや大スターというよりは、懐かしのスターって感じの風情だねえ。
アクションも笑いどころも満載で、意外や楽しめる娯楽作になっている。機関銃撃ちまくりなのに、主人公には全く当たらない、眠っている間に物事が進んでいたりと、まあオバカ満載なのはご愛嬌。 オープニングの飛行機のシーンは、なかなか面白い。 ブロンド美人がとんでもない騒動に巻き込まれると言えば、その昔、チェビー・チェイスとゴールディー・ホーンの『ファール・プレイ』を思い出してしまい、ついそれと比べてしまうとやっぱり物足りないのよねえ。奇想天外なストーリー、ゴールディーの演技、突拍子もない笑いのセンス、『ファール・プレイ』が懐かしいなあ。 『ファール・プレイ』とか『大陸横断超特急』とか、ぶったまげて椅子から転げ落ちるような面白い映画を観たいなあ。今の映画に、そんなすごいものを期待するのが無理なのかなあ。 栗3つ。 まあ、楽しめるよ。暇つぶしにはいいかも。 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン10にて。 |
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2010 08,22 21:04 |
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いやあ、久しぶりにぶったまげたよー。鳥肌たった、背中もゾクゾクした。
スクリーンから映像が滲み出てくるような独特な雰囲気。芸達者な役者の演技にもう釘付け。サスペンスとして、そしてその根底にある愛のドラマとしても秀逸。印象的な駅での別れのシーンは、往年の名作映画のオマージュのよう、ラスト近くのどんでん返しは、「羊たちの沈黙」のような緊迫感だ。 残酷でロマンチック、ちょっぴりユーモアもあって、そしてぎこちない大人のロマンスの過ぎ去った遠い時間を小説という形で浮かび上がらせる手法は流石。 いっぱい言いたいことあるけど、ネタバレになっちゃうから、この辺にしておくけど、もう見ごたえたっぷり。これこそ映画の持つ醍醐味を充分に感じられる作品だ。 あ、この監督、編集も自分でやってるんだ。素敵! 栗4つ。今年のナンバー1かも。 TOHOシネマズシャンテ2にて。 主演女優、上手すぎ。 http://
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2010 08,02 23:45 |
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アンジェリーナ・ジョリーの新作。「17歳のカルテ」や「 マイティ・ハート」など演技派の一面もあるのだが、今や完全にアクション女優だよなあ。
今回も度迫力なバイオレンス・シーンが満載だ。まあ、どこまで本人がやっているか分からないけど、テイストとしては、女版ボーン・アイデンティティーという感じ。 CGを極力使わず、体当たりのバイオレンス・シーンと昔ながらの迫力あるカーチェイスは、ハリウッド映画が古き良き時代の懐古というか、本来の映画の姿に帰ろうという気持ちの表れか。 さて、今作は、主人公のソルトが悪人なのか善人なのか、なかなか分からないようになっている。一応、二重三重に伏線が張ってはあるが、まあ、それほど目新しいものは無いねえ。 つまらない映画ではないけれど、「インセプション」を観た後では、かなり物足りない。 それにしてもアメリカ映画よ、ここまで無闇に人を殺さねばならなない必然性ってあるのかなあ。女一人にいくらなんでも、特殊訓練を受けたシークレット・サービスが大勢かかっても太刀打ちできないって、どうなんじゃろ? うーん、そして、このソルト、ボーンみたくシリーズにするつもりなのか? 栗3つ。 ユナイテッドシネマ豊洲スクリーン10にて。 |
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2010 07,24 23:27 |
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クリストファー・ノーラン監督の新作。ディカプリオ主演では、近年出色の出来。
『マトリックス』の夢版かなあと最初思って観てたけど、二重三重に夢が重なり、夢が層になっていく。各層は、その上位層での出来事に影響されるのがこれまた面白い。第二層での無重力のバイオレンス・シーンは、超最高! 夢の中のありえない世界にCGが使われているけど、基本は、CG無しのアクション・シーンが多く、冒険、アクション活劇として大いに楽しめる。 傑作『エターナル・サンシャイン』以来の脳味噌の中の大冒険という感じだ。 ただ、難を言えば、これほどの設定を思いついたなら、もうちょっとストーリーを考えて欲しかったなあ。主人公のディカプリオと妻のエピソードは、なんだか『惑星ソラリス』の真似っぽいし、そうなると当然あちらの深い人間洞察に勝てるはずも無く・・・。 これで、ものすごい人間心理の描写があったら最高だったんだけどね。 他人のアイデアを盗むにあたり、脳味噌に記憶されているものから盗んじゃおうってことで、夢に中に入って探し当てるというのがすごいよなあ。映画は、それをさらに進めて、他人の夢に乗り込んで別の考えを植え込んじゃおうというのだ。この辺のアイデアがノーランらしい。 ノーランの処女作『フォロウィング』を思わせる時間軸の崩壊とその再構築を観客の脳味噌に投げ込んじゃうというのが、知的冒険アクションって感じでいいねえ。 まあ『エターナル・サンシャイン』ほどの奥深さはないけど、アクション映画としては、大いに楽しめる。脳味噌をフル活動させて、今、どこの層で何が起きているかを考えながら、手に汗握るアクションを満喫してほしい。 この夏、お薦めの一本! 面白かったあ。 栗4つ。 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン10にて。
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2010 07,24 19:24 |
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