2010 12,05 23:14 |
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とにかく危機また危機、ハラハラドキドキの展開に息もつけない。特に山名の関所を抜けたあたりからは、これこそジェットコースター・ムービー、怒涛の如く押し寄せる見せ場の数々、二転三転するストーリーは驚きの連続だ。 前半のお城での氾濫、初期黒澤映画のヒーロー藤田進と黄金期のスター三船敏郎の対決、追っ手の銃弾が飛び交う逃避行、火祭りの踊りと映画的な迫力ある見せ場もたっぷり。その中で、妹を犠牲にした姫の哀しみ、欲深い太平と又七のエゴなど人間ドラマとしても奥深いものになっている。 かつて、こんなにもすごいアクション映画が日本にあったのだ。何度見てもぶったまげる面白さ。これぞ、黒澤映画の醍醐味。映画とは、脚本が命。その代表のような映画だ。 まったく持って爽快なアクション巨編。大傑作。栗5つ。 京橋・フィルムセンターにて。
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2010 12,04 23:09 |
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僕自身、黒澤作品で最も多くの回数を観ているのがこの作品だ。確かに、この作品よりも映画的に完成度の高い黒澤作品はある。けれども、何度も観ても引き込まれる不思議なパワーがこの作品にはある。 今回上映されたのは、ロシアで発見された散逸部分の12分を加えた現存する最長版。それでもオリジナルには、7分足りない。 この映画の魅力は、とてもよく練られ完璧なまでに役者と一体となった登場人物たちだ。クレジットこそ大河内伝次郎が先に名前が出るが、主役は、完全に藤田進であり、藤田演ずる姿三四郎の朴訥で力強く、無鉄砲で強情だけど心優しい男性像には、憧れてしまう。 宿敵檜垣源之助を演じる月形龍之介の不気味な存在感もなかなかの迫力。寺の和尚役の高堂国典も本当にいい味出している。 美しい日本の町並みにも心奪われる。三四郎と小夜の出会いの印象的な場面は、横浜の浅間神社で撮影されたが、現在との変わりように驚くほどだ。 姿三四郎という男の成長物語としても見ごたえたっぷりだが、黒澤のデビュー作にして驚愕の演出には度肝が抜かれる。特に、子供たちの三四郎の歌とともに街中を流れていくカメラ、そしてそして圧巻は、ラストの決闘シーン。吹きすさぶ強風、なびく薄、生き物のように形を変え流れ行く雲の空の下、歌いながら敵を待つ姿三四郎の場面は、黒澤は自然までも演出したかのような、まるでタルコフスキーもぶったまげの美しいシーンだ。 音楽の使い方も素晴らしく、ものすごく効果的。とても戦時中の作品とは思えぬ完成度だ。 なにはさておき魅力的な藤田の姿三四郎。こんな男になりたいなあ。 ただ、女の人から観たらどうなんだろうなあ。小夜みたいな待つ身の女、現代の女性にはどのように映るんだろう。 栗5つ。 京橋・フィルムセンターにて。
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2010 12,01 22:00 |
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旅から帰ってきた三四郎だが、強さ故の辛さに苦悩する日々。そこに登場するのが、車屋の少年。過去の自分を投影させているが、この辺りが分かるようで、二番煎じのようで・・・。また、異種格闘もちょっとおちゃらけていて、まあ三四郎の賞金の扱い方などコミカルで面白いけど・・・。 見所は、荒れて道場で酒を飲む三四郎に、怒りもせず酒徳利で足技をしてみせる矢野正五郎の描写。師匠の器の大きさを示すすごい場面だ。 かつての宿敵檜垣源之助を人力車で送る三四郎、そこに現れる小夜、ここでの源之助の台詞が決まっている。 今回の敵は、檜垣源之助の弟たち。兄貴の敵を討とうとするのだが、月形龍之介が源之助と次男の二役を演じているところと、三男の源三郎のキャラ設定に能の動きを取り入れて不気味で独特の雰囲気を出しており、これが最後の最後まで狂気じみていて怖い。 ラストの決闘場面は、雪中で裸足と過酷だが、前作の圧倒的映像美と比べるとかなり見劣りする。 しかし、この作品は、その後、山小屋でのこれまた緊張感あふれる静かな戦いがあり、その場面が興味深い。 そして最後の三四郎の満面の笑みは、すべてを達観し、これまでの苦悩を吹き飛ばし、次なる人生に進みだした一人の男の未来を台詞のない表情だけで示した素敵なものである。この藤田を笑顔を観るだけでも、この映画を観る価値があるね。 栗3つ。 どうせ一作目は超えられない、じゃあ好き勝手気に実験しちゃおうって姿勢が随所にあって楽しい。 京橋・フィルムセンターにて。
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2010 11,26 23:51 |
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2010 11,20 21:33 |
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まさに黒澤映画の集大成、魂を揺さぶるヒューマニズムの傑作中の傑作だ。 三船の存在感は、圧倒的。全てが素晴らしく、彼以外の配役は考えられないほど。物語は、新入りの医者役の加山雄三の視点で展開していくが、群像劇さながら、多くの登場人物の生き様が織り込まれている。どれも悲惨で、切なく、絶望的ながら、その中にささやかな幸せと生きる希望が垣間見える。 そして、それぞれが強烈な印象を残す俳優陣の演技と演技とぶつかりあいに驚愕する。 過酷の環境の中、それでも生きている人間がいる。「どん底」がとことん希望がないなか、この「赤ひげ」では、人間の優しさと強さの連鎖が他の人々への支えになっている。 途中、何度も鳥肌が立ち、涙腺が切れそうになる。 最初反発している若者が成長していく様が描かれるが、その真っ当な物語展開はあまりに直球だが、心の底からの感動を与えてくれる。 映画を観て、魂が揺さぶられる、そんな数少ない体験をさせてくれる映画史上に残る傑作だ。 栗5つ。なにもかもが完璧。栗10個くらいあげたい。 京橋・フィルムセンターにて。
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2010 11,14 21:31 |
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タイトル通り、まさに人生の底辺、どん底にある江戸の崖下の長屋が舞台。およそ人が住むところと思えぬほどみすぼらしく汚い長屋からカメラはほとんど出ない。もともとが戯曲だから当たり前だが、映画というよりは演劇的色彩が強く、実際40日間のリハーサルを経て撮影されている。 夢も希望もなく、救いようもない絶望的な毎日の中で、それでもなんとか生き抜く市井の人々の描写がものすごい。まるで本当に登場人物そのものになりきっていて、切なくもあり、悲しくもある。されど、悲惨な生活の中でも、博打や歌や踊りに明け暮れる時の人々の表情の明るさに、生きるとは何だろうと考えさせられる。 ここでも山田五十鈴の悪女ぶりは圧巻で、ぶったまげる。 最後にはきっと何か救いがあるのではという観客の想いは、裏切られ、絶望的な最後が待っている。 ラストのどんちゃん騒ぎの後の最高の台詞が印象深い。 絶望的でどん底の人生、それでも生きている人間。生きるとは何ぞやと答の出ぬ問いかけに、映画的表現で応じたものすごい傑作。栗5つ。 京橋・フィルムセンターにて。
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2010 11,14 21:29 |
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そして、こういう特集上映の時は、やっぱりかかさず観にいってしまう。映画は、テレビの画面ではやっぱり物足りない。 この作品は、シェイクスピアの『マクベス』を戦国時代に置き換えたもの。脚本には、 小国英雄、橋本忍、菊島隆三、黒澤明と日本映画の神様的存在の名前が連なる。 三船敏郎の存在感は言わずもがなだが、圧巻は、山田五十鈴だ。彼女の動きには、能の技法が取り入れられ、暗闇から現れる不気味な演出は、背筋がぞっとするほど強烈な印象を残す。 森を疾走する馬に乗った武士、不気味なもののけ、効果的に使われた靄や霧と映像表現にもハッとさせられる。 もののけの予言に振り回されながらも、忠義や信頼をかなぐり捨て、自分の欲望と野望のままに滅び行く人間の悲しい生き様が凄まじい。天下を取ろうとする武将の影で、不気味に男を操る女の恐ろしさも強烈だ。 そして語り草にもなっている有名なラストの弓矢のシーンの迫力たるや、キューブリックの「シャイニング」も真っ青になる。 栗5つ。久しぶりに観てもやっぱりすごい。
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2010 10,22 23:13 |
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スタローンが脚本書いているから、台詞のボキャブラリーが少ないよ。こりゃ、多くの日本人が字幕無しで映画を楽しめるんじゃないの? スタローンが脚本書いているから、台詞がぞっとするほどおぞましいよ。恥ずかしくて聴いている方が赤面しちゃうよ。なんなんだろ、ミッキー・ロークの涙の演技。台詞が阿呆すぎて、それを聴いてまた涙ぐむスタローンが輪をかけて間抜けで、涙のシーンも失笑してしまう。 そしてお決まりのこれでもかの、大爆発と人間殺し。 爆発ドカーン、人間の腕がボーン、爆発ドカーン、人間の頭がズボボーン。吹っ飛ぶよー。血が飛ぶよー。 建物が壊れるよー。 馬鹿、馬鹿、馬鹿のオンパレード。でも、ここまで馬鹿だと見なきゃ損かも。 栗一つ。ユナイテッドシネマ豊洲スクリーン8にて。 馬鹿すぎて、脱力。ここまで馬鹿に徹することができるスタローンって、ある意味すごいかも。 まあ、ジェイソン・ステイサムはかっこいいわ。 何が怖いって、続編があるっぽい終わり方が怖いわー。やめてー。 |
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2010 10,15 23:54 |
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アクションも笑いどころも満載で、意外や楽しめる娯楽作になっている。機関銃撃ちまくりなのに、主人公には全く当たらない、眠っている間に物事が進んでいたりと、まあオバカ満載なのはご愛嬌。 オープニングの飛行機のシーンは、なかなか面白い。 ブロンド美人がとんでもない騒動に巻き込まれると言えば、その昔、チェビー・チェイスとゴールディー・ホーンの『ファール・プレイ』を思い出してしまい、ついそれと比べてしまうとやっぱり物足りないのよねえ。奇想天外なストーリー、ゴールディーの演技、突拍子もない笑いのセンス、『ファール・プレイ』が懐かしいなあ。 『ファール・プレイ』とか『大陸横断超特急』とか、ぶったまげて椅子から転げ落ちるような面白い映画を観たいなあ。今の映画に、そんなすごいものを期待するのが無理なのかなあ。 栗3つ。 まあ、楽しめるよ。暇つぶしにはいいかも。 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン10にて。 |
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2010 08,22 21:04 |
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スクリーンから映像が滲み出てくるような独特な雰囲気。芸達者な役者の演技にもう釘付け。サスペンスとして、そしてその根底にある愛のドラマとしても秀逸。印象的な駅での別れのシーンは、往年の名作映画のオマージュのよう、ラスト近くのどんでん返しは、「羊たちの沈黙」のような緊迫感だ。 残酷でロマンチック、ちょっぴりユーモアもあって、そしてぎこちない大人のロマンスの過ぎ去った遠い時間を小説という形で浮かび上がらせる手法は流石。 いっぱい言いたいことあるけど、ネタバレになっちゃうから、この辺にしておくけど、もう見ごたえたっぷり。これこそ映画の持つ醍醐味を充分に感じられる作品だ。 あ、この監督、編集も自分でやってるんだ。素敵! 栗4つ。今年のナンバー1かも。 TOHOシネマズシャンテ2にて。 主演女優、上手すぎ。 http://
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