2011 06,10 23:15 |
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これ観るの何度目だろう。なのに、どうして、どうして。どうしてこんなに面白いの。
超一級のサスペンスでありがら、愛があり、裏切りがあり、友情があり、そして人生があるなあ。 戦争で荒廃した夜のウィーンの街角に伸びる影、モノクロの印象的な陰影が強烈に眼に焼き付けられる。何度観てもハリー・ライムの登場シーンと観覧車の場面は鳥肌もの。なんという美しさ、そしてなんという恐ろしさだ。 そして全編を通して流れるアーントン・カラスのツィターの音楽が時に軽快に、時に切なく心に響く。 男は友情と正義を天秤にかけ、女は愛情と正義を天秤にかける。それぞれの背景がきちんと説明されている訳ではないのに、それぞれにドラマがありその過去のしがらみと葛藤しているのが表情でよく分かるなあ。 素晴らしい脚本、演出、映像、演技、音楽、なにからなにまで完璧。栗5つ。 TOHOシネマズみゆき座にて。 有名なラストのロング・ショットもたまらない。結末を知っているのに、どうしてこんなに心が釘付けになるんだろう。
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2011 06,10 22:53 |
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『スウィート ヒアアフター』、『アララトの聖母』のアトム・エゴヤンの新作ということで期待を胸に出かけたが、これがものすごく残念な出来。おまけにフランス映画『恍惚』のリメイクだった。
夫の浮気の疑惑を確かめるため、若い娼婦に夫を誘惑させるというものだけど、とにかく展開がありきたり。どんでん返しとなるだろうと仕込まれた展開も拍子抜け。『キッズ・オールライト』も同じ映画館で公開されているジュリアン・ムーアは、はっきり言ってミス・キャスト。まあ実際は、時期がずれているんだろうけど。ジュリアン・ムーアは、腕と肩の肌が汚い。あと、顔がシガーニー・ウィーバーだなあ。 若い子で中年を誘惑というので、三島由紀夫の『禁色』をイメージしたが、ある意味『禁色』だったわけで・・・。 なによりも、クライマックスと結末がなんともハリウッド映画チックで、これ本当にエゴヤンの作品なの?と目を疑うほど。 これは、完全にチラシと予告編に騙されたなあ。栗2つ。 TOHOシネマズシャンテ2にて。 |
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2011 06,10 22:38 |
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2011 06,05 15:02 |
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今年は、マット・デイモンの映画がたくさん公開されてるな。フィリップ・K・ディックの原作の映画化。彼の作品は、たくさん映画化されているけど、「トータル・リコール」、「マイノリティー・レポート」、「ペイチェック」とろくなものがないなあ。唯一、「ブレード・ランナー」だけが傑作。
今回は、SFというかラブ・ロマンスな感じ。え、そんなオチ?とちょっと拍子抜けしちゃう。 ただ、ニューヨークの街並は、「あ、ここ行ったことがある」って感じでちょっとした観光気分に。 往年の映画ファンには、テレンス・スタンプが出てくるのが涙もの。 SF映画を期待していくとちょっと残念かも。 栗3つ。 TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン3にて。 あ、今月の紙兎ロペは、傑作。 |
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2011 06,03 23:35 |
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よくできたコメディ。レズビアンの夫婦という設定が新しいのかもしれないけど、その設定を除けば別段特別な要素は無い。精子バンクからの提供でそれぞれ子供を生んだカップル、子供たちが自分の生物学上の父親を生活に引き入れたため騒動が起きる。
レズビアンの夫婦だからというのは実は話の本質ではなく、登場人物それぞれが日常鬱積していた負の思いを持っていてそれが、父親の登場で爆発するというものだ。聡明だけどいつまで母親から子供扱いされる娘、父親のいない喪失感で不良友だちとつるむ息子、自分のキャリアの負い目に感じている主人公、全てを支配していて家族から慕われていると思っていたもう一人の主人公、事業に成功して好き勝手生きていたがある日家族の暖かさに触れてしまいレズビアンの女性に恋してしまう精子提供者の父親と、それぞれの思いが弾けながら物語は進む。 展開は、予想の範囲内だけど、英語で聞くと台詞は結構面白い。特に面白さでは、アカデミーにノミネートされた亜ネット・ベニングよりジュリアン・ムーアの方が軍配が上がる。彼女の演技は、爆笑だ。 一方、ノミネートされたベニングは、クライマックスの食事の場面のいろんな感情を表現した演技が圧巻。でも、彼女には、「アメリカン・ビューティー」で取って欲しかったよなあ。 テンポもよく最後まで飽きずに観られるけど、センスというか感覚がアメリカ人的だよなあ。アメリカ映画だから当たり前だけど。家庭で演説したり、ちょっと馴染めないところが多いなあ。 栗3つ。ジュリアン・ムーアがとにかく面白い。 TOHOシネマズ シャンテ2にて。 |
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2011 05,29 23:07 |
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この映画は、何度も観ているのだけど、テレビかビデオばかりで、映画館で観るのは初めて。フィルムで観たかった映画の筆頭なんだよねえ。
とにかく脚本が良くできている。いいストーリー、俳優、台詞、音楽があれば、CGとか特殊効果なんか全く無くてもすごい映画が作れるのだという見本だ。 戦時中に作られ、反ドイツ的感情がむき出しなのはわかるけど、てめえも植民地化しちゃっているモロッコで、フランス国家を店の客で合唱して涙ってのはどうかと思うよ。 まあ、戦時中のそうした思いはさておき、名台詞の宝庫であるこの映画、主題歌「As time goes by」の効果的な使い方もぐっときちゃう。 イングリッド・バーグマン扮する女が、本当はどっちの男を愛しているのか分からないのがいい。ラブ・ロマンスとしても戦時下のサスペンスとしても良くできている。本当に脚本の勝利だ。 唯一、気に入らないのはラスト。あんなかっこいい台詞を吐いたんだから、飛び立った飛行機の後、ハンフリー・ボガード演じるリックがどうなったのか分からない結末の方が、心にジーンときて良い余韻に浸れたのになあ。リックを取り囲む警官隊の姿が飛行機の窓から見えるとかねえ。あのほのぼのラストシーンだけがこの映画のいただけないとこなのよ。 TOHOシネマズみゆき座にて。栗4つ。 ラストは嫌いだけど、すごい映画だ。 |
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2011 05,21 17:11 |
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ナタリー・ポートマンがアカデミー主演女優賞を取った作品。それも納得の名演技だ。どのキャスティングもばっちりと登場人物にはまっており、ナタリーの臆病で繊細な心と表情がだんだんと狂気にふれていくそのさまは圧巻だ。
監督は、ダーレン・アロノフスキー。おお、「レスラー」良かったねえ。そして、「レクイエム・フォー・ドリーム」も・・・。まあ、「レクイエム・フォー・ドリーム」に比べるとおぞましさと悲惨さはかわいいものだが、それでも時折ホラーちっくな展開が体にこたえる。 バレエ団のプリマドンナにかかるプレッシャー、それが並大抵のものでないこと、その座を狙うライバルの存在、神経質で娘をいつまでも子供のように溺愛する母親、自分がトップの座から引きずり落としたかつてのプリマドンナと、取り巻く人間模様と環境は正直言って怖い。 夢と現実の区別が曖昧になり、虚栄、自尊、嫉妬、恐怖など自己に内在する様々感情を表現するナタリーの演技は賞賛に値する。 惜しいのは、カメラワーク。手持ちカメラは、ドキュメンタリー調でなかなか良いが、肝心のバレエのシーンがちょっと陳腐に見える。ただ、ラストの黒鳥の舞は、なかなか良かった。 なんとも寂しく惨めな役で、久しぶりウィノナ・ライダーも・・・。 展開は、予想どうりだけれども、なかなかに魅せる秀作。栗4つ。 かなりえぐいシーンが多々あり、観る側の体には結構こたえる。 TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン5にて。
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2011 05,07 23:50 |
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結末を二つ予想してみて、その片方がビンゴ。うーん、この手の設定は、よほどの意表をつく展開がないとかなり肩透かしになる。
ベルリンって設定が良い感じではあるけど、もう東ベルリンにあった怪しげで冷たくちょっと怖い雰囲気は微塵もないので、いまいちサスペンスも盛り上がらない。 それでも前半は、謎、謎、謎がいい感じに漂っていて、旧東ドイツの秘密警察あたりがからんでくるのは、もしかして面白くなるかもと思わせた。なんせ、その秘密警察役がブルーノ・ガンツだからね。でも、期待するほどの展開は、なかったよ。 そして、クライマックスは、もうハリウッド映画バンザーイの、ド派手なアクションシーンと爆発シーンが盛りだくさんさ。 そして、誰もがそうじゃないかと途中で気付き始まるラストへ向かって一直線。あんた何様?的なハッピーエンドで拍子抜けさ。 栗2つ。ユナイテッドシネマ豊洲スクリーン1にて。 |
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2011 04,27 23:29 |
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久しぶりにすごい映画を観た。そして、これまで観たどんな映画とも違う。
ゆったりとした時間の流れ。森の囀り、静かな会話、目に染みる緑の映像に包みこまれる。 生きる者と死者と森の精霊が同じ食卓に並ぶ不思議な空間の演出に圧倒される。特に主人公の前妻が現れる場面は鳥肌ものだ。 森の中で赤く光る精霊の目、洞窟の描写はちょっとホラー映画な風情。王女と鯰の寓話は、神話のような美しさ、ブンミの義妹役の女優の完璧なまでの自然な演技、ラストの音楽も選曲も秀逸だ。 死期がせまる主人公ブンミは、前妻の幽霊に導かれ森の中の洞窟へと入っていく。それは、まるで産道のよう。死に行くものが産道を逆流するかのように、死が次の生を暗示している。 タイの僧侶が書いた冊子「「前世を思い出せる男」に着想を得たというこの監督。恐ろしいまでに美しい映像表現と何気ない会話に現れた人生感が素晴らしい。 日本や中国の古典文学にも出てきそうな東洋的輪廻の思想が不思議な感覚を体の中に呼び覚ます。 死が決して悲しいものでなく、あっけらかんと受け入れ(葬式のネオンの賑やかなこと)、また死者との対話を普通に行う時空を越えた不思議な世界に引き込まれてしまう。 栗5つ。久しぶりにものすごい作品を観た。いや、これは体験したに等しい。 渋谷・シネマライズにて。
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2011 04,23 23:17 |
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渋谷のヒューマントラスト・シネマがボロいので、わざわざ川崎のチネチッタまで行ってきた。ものすごい大スクリーンでこの映画が観られた。
内容は、タイトルそのまま。紳士的で優秀なシェリフが実は殺人鬼の側面を持っているというもの。人間の奥底に潜む狂気を描いたという点では評価できる。マイケル・ウィンターボトムは、本当に毎回違ったジャンルの映画を作る、それには感服する。 時代が50年代だから成り立つ話だね。現代の科学を持ってすれば、誰が犯人がすぐ分かる。しかし、素人でも怪しいと気付くよなあ。殺された男がピストル撃たれた角度やそもそも瀕死の女が正確に急所に発砲したりねえ。ありえない。 細部の考証はボロボロだけど、愛するものを自己の虚栄のために殺めていく主人公にいかに感情移入できるかだ。そもそも本当に愛していたのか?映画では、少年時代のトラウマと重ね合わせているが、自己の二面性という意味では誰しもがもっているものだとは思う。 殺人シーンは残虐で、後味はかなり悪い。まあ、フォントリアーほどじゃないけど・・・。 川崎チネチッタ スクリーン5にて。栗3つ。 |
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