2011 05,07 23:50 |
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ベルリンって設定が良い感じではあるけど、もう東ベルリンにあった怪しげで冷たくちょっと怖い雰囲気は微塵もないので、いまいちサスペンスも盛り上がらない。 それでも前半は、謎、謎、謎がいい感じに漂っていて、旧東ドイツの秘密警察あたりがからんでくるのは、もしかして面白くなるかもと思わせた。なんせ、その秘密警察役がブルーノ・ガンツだからね。でも、期待するほどの展開は、なかったよ。 そして、クライマックスは、もうハリウッド映画バンザーイの、ド派手なアクションシーンと爆発シーンが盛りだくさんさ。 そして、誰もがそうじゃないかと途中で気付き始まるラストへ向かって一直線。あんた何様?的なハッピーエンドで拍子抜けさ。 栗2つ。ユナイテッドシネマ豊洲スクリーン1にて。 |
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2011 04,27 23:29 |
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ゆったりとした時間の流れ。森の囀り、静かな会話、目に染みる緑の映像に包みこまれる。 生きる者と死者と森の精霊が同じ食卓に並ぶ不思議な空間の演出に圧倒される。特に主人公の前妻が現れる場面は鳥肌ものだ。 森の中で赤く光る精霊の目、洞窟の描写はちょっとホラー映画な風情。王女と鯰の寓話は、神話のような美しさ、ブンミの義妹役の女優の完璧なまでの自然な演技、ラストの音楽も選曲も秀逸だ。 死期がせまる主人公ブンミは、前妻の幽霊に導かれ森の中の洞窟へと入っていく。それは、まるで産道のよう。死に行くものが産道を逆流するかのように、死が次の生を暗示している。 タイの僧侶が書いた冊子「「前世を思い出せる男」に着想を得たというこの監督。恐ろしいまでに美しい映像表現と何気ない会話に現れた人生感が素晴らしい。 日本や中国の古典文学にも出てきそうな東洋的輪廻の思想が不思議な感覚を体の中に呼び覚ます。 死が決して悲しいものでなく、あっけらかんと受け入れ(葬式のネオンの賑やかなこと)、また死者との対話を普通に行う時空を越えた不思議な世界に引き込まれてしまう。 栗5つ。久しぶりにものすごい作品を観た。いや、これは体験したに等しい。 渋谷・シネマライズにて。
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2011 04,23 23:17 |
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内容は、タイトルそのまま。紳士的で優秀なシェリフが実は殺人鬼の側面を持っているというもの。人間の奥底に潜む狂気を描いたという点では評価できる。マイケル・ウィンターボトムは、本当に毎回違ったジャンルの映画を作る、それには感服する。 時代が50年代だから成り立つ話だね。現代の科学を持ってすれば、誰が犯人がすぐ分かる。しかし、素人でも怪しいと気付くよなあ。殺された男がピストル撃たれた角度やそもそも瀕死の女が正確に急所に発砲したりねえ。ありえない。 細部の考証はボロボロだけど、愛するものを自己の虚栄のために殺めていく主人公にいかに感情移入できるかだ。そもそも本当に愛していたのか?映画では、少年時代のトラウマと重ね合わせているが、自己の二面性という意味では誰しもがもっているものだとは思う。 殺人シーンは残虐で、後味はかなり悪い。まあ、フォントリアーほどじゃないけど・・・。 川崎チネチッタ スクリーン5にて。栗3つ。 |
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2011 04,22 23:11 |
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「ディボース・ショウ」「 レディ・キラーズ」「バーン・アフター・リーディング」とこのところハズレが多かったコーエン兄弟だけど、「ノーカントリー」で久々にものすごいものを見せてくれた。そして、これ、アカデミー作品賞にノミネートされていながら日本未公開だった。確かに内容、出演者ともにとても地味だ。 しかし、ものすごく見ごたえある映画だ。初期のコーエン兄弟を彷彿させるテイストにワクワクドキドキ。ほとんど知らない俳優だけど、みな芸達者ですごく楽しめた。 ユダヤ教のいろんな行事が興味深かった。ラビと信者の関係がまた面白い。 以前の「ブラッド・シンプル」や「ファーゴ」のように何気ない人生の選択が、その後のとんでもない展開へと進んでいく。人間は、それに対して右往左往してしまうのだが、冒頭のポーランドの挿話の「起こる事象の全てを受け入れよ」よろしく、東洋の「塞翁が馬」のような思想が伺える。 コーエン兄弟の特有の鮮烈なイメージとブラックユーモアに久々に回帰した傑作。人間のダメなところも、愛すべきところも全てがよく表現されたまるで古典落語のような作品だ。 市井の人々がみなとんでもないのがこの監督の映画の面白いところだ。ラストも秀逸。 栗4つ。 ヒューマントラストシネマ渋谷 スクリーン3にて。 |
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2011 04,16 13:24 |
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2011 04,14 23:49 |
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女性が男の遊び道具みたいだし、意味もなくむやみに人を殺すし、どうなんだろう、この映画、今観ると。 ただ、滅び行く西部の男たちが、だんだんと追い詰められていく過程はなかなか。 そして、やっぱり、ウィリアム・ホールデンだよなあ。子供の頃、アメリカ映画というと、まっさきにこの人が浮かんだよなあ。「慕情」とか「ピクニック」とかかっこよかったよなあ。もちろん、リアルタイムでは観てないけど。 どうもドンパチ、ドンパチものは苦手なんだよなあ。栗3つ。 TOHOシネマズみゆき座にて。 |
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2011 03,04 23:54 |
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デビット・ボウイの息子ダンカン・ジョーンズの監督作品。ストーリー原案も彼によるものらしい。 低予算だったためか、CGを使わず、ミニチュアみたいな月のセットが逆に新鮮で美しい。 月の資源の採掘のため、一人月で作業する主人公。話し相手は、HALのような人工知能を持ったコンピューター。このコンピューターの声のみの出演にケヴィン・スペイシーってのが渋い。 通信衛星の故障で地球とライブ中継ができず、録画した映像のやり取りしかできない。 3年の期限の労働がもうすぐ終わろうとする主人公に驚愕の真実が突きつけられるという内容だ。 「2001年宇宙の旅」と「惑星ソラリス」をくっつけたような感じだけど、それと比べるとかなりのお粗末さは否めない。ただ、ちょっとチープでシュールなSFとしては見応えがある。 もう一人の自分が現れてから、その互いの苦悩がもっと出ていれば、これ傑作になる可能性もあったのになあ。やはり、悲しい運命を抱えた人間の苦悩の描き方がもう一歩というところか。 ただ醸しだす雰囲気は、とてもいい。次回作とか期待しちゃうな。 栗3つ。中途半端だけど、楽しめる映画だ。 ユナイテッドシネマズ豊洲 スクリーン6にて。
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2011 03,03 23:11 |
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もともとのコンセプト「地球は神ではなく、悪魔が創造した」というオチを製作総指の人がうっかりもらしてしまったため、トリアーが脚本を書き直し、そのせいだかわからんけど、トリアー自身がうつ病になってしまい完成が遅れた作品だ。 えげつないグロテスクなシーンが多く、おまけにR指定だ。猥褻というより、グロテスクなシーンが性器に向けられているからか。しかし、日本では映倫の指導ですごいシーンはぼかしが入っている。 これは、好き嫌いが分かれる映画だろうな。まあ、トリアーの作品は、みなそうだけど。 正直、全体的な印象は、ホラー映画だ。はっきりいって怖いよ。ただ、「13日の金曜日」みたいなB級ホラーというよりは、「エクソシスト」や「ローズマリーの赤ちゃん」のような格調高い雰囲気はある。 残念なのは、デジタル処理が多いことか。 さらっと観ると、ただのホラー映画としか思えぬ節もある。 されど、いろいろ考えてみるとなかなかに設定は面白い。 タイトルは、「Anti Chris♀」となっており、Tが女性のマークになっている。後半、豹変するシャルロット・ゲンズブールが悪魔で、「最後の誘惑」でキリストを演じたウィレム・デフォーが神なのか(?)、神と悪魔の壮絶な死闘が繰り広げられる。 エンド・クレジットで、「タルコフスキーに捧ぐ」と出る。と、ここで初めて、いろんなことに気付きだす。プロローグで出てくる3人の乞食の像は、タルコフスキーの「サクリファイス」の「東方の三賢人」とだぶり、森の中の枯れた白い大木は、これまたサクリファイスの有名なオープニング・シーンのオマージュのようだ。(もともと「サクリファイス」のそのシーンは、溝口の「雨月物語」のオマージュだけど) とキリスト教に詳しい人が観ると、もっともっといろんな埋め込まれたメッセージが見えてくるんだろうなあ。 隠れたメッセージや意味、テーマを考えながら観ると奥深いのかもしれなけど、そういうの何も考えないとただのホラー映画だね。 とにかく観客の気持ちを逆なでするかのような痛いシーンの連発は、好き嫌いの分かれるところだろう。 栗3つ。ヒューマントラストシネマ有楽町 スクリーン1にて。 ウィレアム・デフォーの顔が生理的に苦手。ごめん。セックス・シーンの嫌悪感の原因は、そこだったりして。 |
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2011 02,26 22:44 |
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コリン・ファースの演技は、良かったね。吃音の悩みと次男なのに王にならなきゃいけない葛藤とが素晴らしくよく滲み出ていた。 ただ、僕は、淫らなアメリカ人女性と結婚するために王位を投げ出した兄の話の方が面白いんじゃねえかと思ったよ。 まともな役のヘレナ・ボナム・カーターを久しぶりに観たよ。 ジェフリー・ラッシュも巧いねえ。 という訳で演技は、楽しめる。 でも、お話はというと、これまたありきたりの展開で、ところどころ微笑ましいエピソードはあるものの、それほどすごいってものは無かったねえ。 クライマックスのドイツへの宣戦布告のスピーチだけど、やはり自国民が聞くのとはそれほど思い入れが違うのか、それほど感動的でもなかった。それに、なんでドイツへ戦線布告しているのに、バックに流れる音楽がベートーヴェンなんだろう?あえて? きわめてオーソドックスな作りで新しさもなく、これといってすごいところもなく、淡々としている。まあ、奇抜な設定ばかりが目立つ昨今の映画の中では、まともに見える大人の映画なのかもしれない。 個人的には、「ソーシャル・ネットワーク」の方が見ごたえあったなあ。二度目も観た時も面白く最後まで釘付けだったし。この「英国王のスピーチ」は、もう別に観たくない。 栗3つ。普通の出来。期待しすぎると拍子抜けかも。 TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン7にて。 |
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2011 02,25 22:16 |
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内容は、いかにもアメリカ人が好きそうなお下劣ネタのオンパレード。下品で、いやらしくて、馬鹿馬鹿しくて、とんでもない。とにかく品がない。 超下品だけど、脚本はそれなりに練られており、二転三転するストーリーは、最後まで飽きさせず魅せる。まあ、消えた花婿のオチがいまいちだけど。もっととんでもない結末があるのかと期待しちゃった。 へんてこりんな危ないキャラとしては、マイケル・マクドナルド似のアラン役の太っちょが面白い。この配役は、秀逸。ただ、昔のジョン・ベルーシなんかと比べるとまだまだパワー不足かなあ。 あと、やっぱり、ゴールディー・ホーンの「ファール・プレイ」のような奇想天外で抱腹絶倒のコメディを知っている世代からみると、まだまだ物足りないよなあ。 結局二日酔いの理由がドラッグというオチがちょっと残念。 それでも2時間、楽しく過ごせる。最高の暇つぶし。 アメリカでのヒットを受けて、今年続編が公開される。舞台は、ラスベガスからタイのバンコクになるらしい。あのボクサーもまた出ているらしい。 栗3つ。エンドクレジットのデジカメ写真が一番面白かったりする・・・。 ユナイテッドシネマ豊洲 スクリーン6にて。 |
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